舞踏:生命の原初発露

ダンス規制削除求める署名 坂本龍一さんらが呼び掛け人

「署名活動は、関西のクラブ経営者や利用者で作る「Let’s Dance署名推進委員会」が主催。委員会によると、最近は同法違反でクラブ経営者らの摘発が相次いでおり、廃業を余儀なくされた店もある。委員会は「風営法ができた当時は、ダンスホール買売春が行われていたとされたため『ダンス』が規制対象になった。現状にはそぐわない」としている。」(産経ニュース)

風俗営業法の第一条をご覧ください。

 第一条 (風営法の目的)

「この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業 及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全 化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。 」
 

 

風営法第一条は、善良の風俗と清浄な風俗環境の保持と清浄な風俗環境の保持、 少年の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止が風営法の目的であることを規定しています。

ところでここいう「善良の風俗」とは、法解釈上どのような意味なのでしょうか?

この点を昭和32年3月13日の最高裁判例はこういっています。

「… … もちろん法はすべての道徳や善良の風俗を維持する任務を負わされているものではない。かような任務は教育や宗教の分野に属し、法は単に社会秩序の維持に関し重要な意義をもつ道徳すなわち「最少限度の道徳」だけを自己の中に取り入れ、それが実現を企図するのである。刑法各本条が犯罪として掲げているところのものは要するにかような最少限度の道徳に違反した行為だと認められる種類のものである。性道徳に関しても法はその最少限度を維持することを任務とする」

最高裁判所風営法運営の初期の段階で、民意の支持が風俗警察活動の基盤には随時補給される必要があるという本質を念押ししています。

風営法の中核をなすのは、「客に酒を飲ませる営業」、 「射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」、及び「性を売り物にする営業」です。

これらは、俗に「飲む、打つ、買う」といわれる人間の欲望に深く関わる営業です。

国家という私たちの所属する最大グループがそれら風俗の退廃を恐れるのは、それがわたしたち国家の統率力に影響すると知っているからにほかなりません。

しかしながら同時にそれを規制するに当たっては、わたしやあなたひとりひとりの常識に立脚し、世論の理解と支持が得られるものでもなければならないと、最高裁判例は言っているのです。

なぜならば風俗営業という圧力弁こそは、わたしやあなたの生命活動と密接な関係にあるものごとだからであり、ことさら精妙な調整が要求される部位だからです。

クラブ文化を愛する人が、「怖いイメージとか不健全なイメージがある方もいるかもしれませんが、そこには音楽とお酒の好きな寂しがりやたちが集まってるだけ」なのだと教えてくれました。

法はその自治維持という目的を果たす前に、まずその権力の成立根拠を丁寧にたどるべきです。

そうでなければその規制は、わたしやあなたの胸にぬぐえない違和感を置いていくかもしれません。

 

(参照書籍)