サクリファイス:魔女が寝ようと誘う

野田消費者相もマルチ擁護 「勉強不足」と釈明
「平成8年4月、訪問販売法改正について、素朴な疑問を持ち国会質問した。「マルチはすべて駄目だ」と、これに基づいた動きが出ていると懸念を感じた。12年前にも訪問販売や連鎖取引はあり、私も商品を買ったことがある。現実にあるものをすべてなくすのが可能かとの疑問の中で、いくつか質問した。被害に遭った消費者が現実に救われる方法、例えばクーリングオフをしっかり担保することを(質問で)申し上げた。」

特定商取引法の33条1項をごらんください。

第33条(連鎖販売取引の定義)

「この章並びに第66条第1項及び第67条第1項において「連鎖販売業」とは、物品の販売又は有償で行う役務の提供の事業であつて、販売の目的物たる物品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益を収受し得ることをもつ て誘引し、その者と特定負担を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引をするものをいう。」

 

(以下参照:特定商取引法ハンドブック第3版 日本評論社より)

マルチ商法は、かつて昭和51年12月3日に施行された「訪問販売等に関する法律」により、また現行法では特定商取引に関する法律33条1項により、連鎖販売業・連鎖販売取 引と定義され、その勧誘方法等に関する規制を受けています。

マルチ商法は、その共通する基本構造として、次のような特徴が指摘されています。

「① 販売員は通常給料を得て販売業者のために仕事をするが、このシステムでは、それまで商売・事業の知識経験のない一般消費者を商人という形態で取り込む。

② 加入者をいくつかのレベルに区分して、上級のレベルほどその資格を取得する負担を大きくする反面、利益を大きくする。

③ 加入者の利益の源泉として、商品流通による中間マージンのほかに、新たな加入者を増やすこと、あるいは、配下の加入者を上のレベルに昇格させること(いずれもリクルートと呼ばれる)により、多額の利益を得られることを強調する。」

そしてこの③がマルチの最大の特徴であり、商品流通による中間マージンよりもリクルートによる利益の方が多くなるような仕組みにして、新規加入者をリクルートする時のセールス・ポイントにしています。

法がねずみ講マルチ商法を禁止ないしは警戒するのは、そもそもそのシステムに参加する人が無限に増加していかないと、その参加者の投下した金額を回収できないという共通の構造をもっているがゆえです。

その計算によれば、仮に1日に2人ずつ参加させていくとすれば、28日目には日本の全人口を上回る人を新たに参加させなければならないことになります。

つまりこのような組織においては、リクルートの無限の維持拡大が組織存立の根本条件をなしており、それがゆえに射倖性、賭博性をもって勧誘がしばしば人的関係で行われ、この組織の開設、運営を認めてしまうと、(内包する破綻の必然を隠匿した)詐欺的勧誘がなされざるをえないことになります。

特定商取引法は”乗れば乗るほど先に乗った乗客が儲かるらしい”という熱狂に誘われて、沈むことが約束された船へ乗客が押し寄せる悲劇を繰り返させないため、33条から40条まででマルチ商法をはっきりと規制しています。

 

わたしたちは社会に出て、誰しも組織の一員として人に使われているうちは、なかなか思うように蓄財をなすことができないようだと悟ります。

しかしながらまた、巷にあふれる起業の本がいうほど、簡単には事業のアイディアを思いつけないことも、また易々とそれを実行に移せないことも疲れた体で知ることにもなります。

もしそうだとしてもその間隙を埋めるものが、大切な人間関係を焼き払うマルチ商法という方法論にしか見いだせないのだとしたら、わたしたちはあまりにも自分という存在を安く見下しすぎているのではないか。

法33条はあたかもそうした忠告を遠からず送っているかのようです。