「身分なき共犯」守屋前次官の妻も逮捕(iza)
「収賄罪は公務員に適用される「身分犯」だが、特捜部は、幸子容疑者がゴルフ接待に同伴するだけでなく、単独でも積極的に接待を受けていたことを重視。収賄容疑の「身分なき共犯」として逮捕した。」
刑法の65条1項をご覧下さい。
第65条(身分犯の共犯) 「1 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」 |
”あの人は、その罪を犯した”と呼ぶためには、一定の身分のあることが必要な犯罪のことを、刑法上「身分犯」と呼んでいます。
身分犯には、収賄罪や職権濫用罪のように、公務員であるといったような身分人だけが行うことができる「真正身分犯」と、業務上横領罪のように、もし特定の身分があるときは普通より重い刑が科される「不真正身分犯」があります。
さて防衛省の事務次官という公務員が賄賂をもらう真正身分犯に関わって、もし身分のない奥さんも積極協力したとき、わたしたちの刑法は奥さんをどのように取扱うべきでしょうか?
これは刑法学上”共犯と身分の問題”と呼ばれている論点です。
公務員でもなんでもない奥さんを、収賄罪の共同正犯、つまり一種の主犯と認識できるかといったポイントで、刑法学者たちは立ち止まるのです。
学説上の通説や判例(昭和9年11月20日)は、65条1項の文言をもって、ただの奥さんでも共同正犯と呼べるのだと解釈してきました。
一方で学説上の反対説によれば、65条1項にいう「共犯」とは、ただの教唆犯や幇助犯を意味しており、奥さんは共同正犯とはできないことになります。
結局現時点では、奥さんの処遇は審議を担当する裁判官の、65条1項の解釈の仕方次第(あるいは国家の運営方針次第)だといえます。
非身分犯という解釈の難しい犯罪を、刑法があらかじめ規定しているのは、立法者が歴史の書をゆっくりと紐解いた上のことです。
古来から身内がしかるべき地位に就き、長期に渡るおだてにのぼせ上がれば、身分なくともやすやすと結界を切ってきたのだと、そこには私たちの性質があからさまに記録されているのです。
(参照文献)