代理はいらない、端倪をくれ

「安倍首相、判断力に支障なし」官房長官 (iza)
与謝野馨官房長官は18日の記者会見で、入院中の安倍晋三首相の容体について「判断力に支障が生ずることはまったくない。首相に判断をあおぐべき案件をいつでも決裁する態勢は整えている」との主治医の所見を発表した。これを受け、引き続き首相臨時代理を置かない方針も明らかにした。」

内閣法の第九条をごらんください。

「9条

内閣総理大臣に事故のあるとき、又は内閣総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。」 

阿部総理は、国会議員の中から国会の議決で指名され、天皇によって任命されています。

総理とは、内閣という合議体の首長です。

もともと戦前の憲法では、総理といえども単に他の大臣と対等な地位でしかありませんでした。

しかしそのような位置づけでは閣内で意見がまとまらない場合、内閣の統一見解というものを総理がリードして形成することができず、衆院が解散するか内閣が総辞職するしかなくなりました。

そこで現代の憲法は、総理を内閣のリーダーと位置づけしています。

そして総理の内閣指導権を裏づけるために、他の大臣のをクビにする権利や、内閣の統一議案を国会へ提出し、一般国務や外交関係を国会に報告し、行政各部を指揮監督する権限が、総理に与えられています。

総理の権限が戦後憲法で強化されたのは、内閣がリーダーの存在下で統一意思を形成し、その責任を連帯でとらせようという設計です。

それはコックピット内の操縦士間に機長という存在を置くことで、コックピットの意思統一を実現し、そのことで乗客達へ安全快適な飛行を約束する効果を狙っている構造にも似ています。(私見)

そしてあたかもジェット機の乗客達へ乗員が連帯で責任を負うような緊張関係を国会と内閣の間に持ち込んで、飛行機の行方を操縦士たちの勝手にはさせないようにしているのが、わたしたちが議院内閣制と呼ぶシステムです。

わたしたちの国の現在の機長、安倍晋三現総理大臣は、深刻な体調不良のためその職を辞すると表明しました。

しかしもし、内閣法九条を発動させ内閣総理大臣臨時代理がコックピットの機長となったとしても、副総理は他の大臣をクビに出来る任免権などを行使できないとするのが先例です。

そのあまりに強力な権限は極めて個人的な属性に託されたはずのものであり、単に代理で執行する人には託されていないと考えられているからです。

そして安倍総理ほど、大臣の任免権をたびたびちらつかさざるを得なかった人もいなかったでしょう。

数々の立法を実現し、満身創痍の安倍総理は病の床に倒れました。

立法された法の内容は別にして、現実に行われた仕事の手数を見、病に倒れるほどの仕事への姿勢を見れば、個人的には世間で現総理に浴びせられているほどの失望の言は浮かんでこないのです。

 

 

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