公平のためのルールで従順な選手を殺そう

お粗末運営、競歩で誘導ミス/世界陸上(ニッカンスポーツ)

「世界に醜態をさらすミスだ。周回を数える係員と、道路を挟み反対側にいる記録係の連絡ミスにより、山崎の周回は47・5キロ地点で1周多く、カウントされていた。「(山崎は)終わりや」という指示に係員は、そのまま競技場へ誘導。直後、救護担当役員が間違いを伝え呼び戻すべく山崎を追いかけたが、その権限がなく、ためらううちに山崎は行ってしまったという。」

陸上競技ルールブック2007から、第230条の12項をごらんください。

「第230条 競歩競技

「⑫ 審判長が審判員,監察員またはそれ以外の報告により,競技者がコースをはずれ距離を短くしたと判定した場合,競技者は失格となる。」 

競歩とは、本規則230条1項によれば、「いずれかの足が、常に地面から離れない(ロス・オブ・コンタクトにならない)ようにして歩く」状態を保って速度を競い合う競技ということになります。

さらに「前脚は、接地の瞬間から垂直の位置になるまで、まっすぐに伸びていなければならない(ベント・ニーにならない)」とまで厳格にそのフォームを定めています。

このため単純に速度を競い合う他のランニング競技に比べ、競歩が道路上で行われる場合、「主任を含め6人から9人の競歩審判員」が配置されてそのフォームを審査しています。(2項4号)

そして競歩の定義に反するおそれがあるときは、競技者は黄色のパドルで注意を受け(3項)、もし「ロス・オブ・コンタクト」あるいは「ベント・ニー」があれば審判員は赤カードを競歩審判員主任に出さなければなりません。(5項)

もし競技者が3人以上の審判員から赤カードを出されたら失格となります。(6項1号)

さらに競歩審判員主任が、歩型違反を認定すれば、彼は競技者を単独で失格にする権限を持っています。(3項1号)

これほどまでにフォームに厳しい競技である競歩であれば、審判員を勤める方々の質の高さこそが、競技当日に選手達がそれまで賭けてきた選手人生を裏打ちしてくれるのだといえるでしょう。

あの大舞台で周回を数え間違えた審判員の方に、気のゆるみなど勿論なかったはずです。

もし欠けていたものがあったとすれば、どれだけ一生懸命おつとめだったとしても、やはり冷静に”大舞台での審判としての能力”だといわざるをえません。

老人たちが徹底的に責任を取る姿勢を見せなければ、今後誤誘導があった場合にはどう対処すればよいのかというリスクを、競技者達の頭の片隅から離すことはできません。

 

 

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