フランチャイズ・トラップ:最初から織り込まれたリスク

コロちゃん自己破産:驚き、途方に暮れるフランチャイズ店主 /岐阜(毎日新聞)
「コロッケ小売りチェーンの「コロちゃん」(本社・恵那市)が12日、名古屋地裁に自己破産を申請した問題で、フランチャイズで店を経営する店主らは「まったく知らなかった」と驚き、途方に暮れた。岐阜市内に店舗を構える女性店主(68)は自己破産を全く知らず、この日も通常通り店を開いた。店主は「今日も発注のため代金を振り込もうとしたが、本社の役員にも電話が通じず、おかしいと思った」という。店は3年前に開業。今月1日に無償で店舗を譲り受けるとする契約を交わしたばかりだった。店主は「先月に2回、本社が配送業者に代金を払えず、発注した商品が店に届かなかった」と本社の経営が苦しいことには気付いていたという。」

中小小売商業振興法の11条1項をごらんください。

11条

「1 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるものを行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

1.加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
2.加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
3.経営の指導に関する事項
4.使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
5.契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
6.前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項」 

フランチャイズ契約とは、商品の製造会社、あるいは主宰会社が、加盟店に対して、地域的一手販売権を与える契約のことをいいます。

主催者がフランチャイザー、加盟者をフランチャイジーです。

その契約には単なる商材の卸と小売りの関係に終わらない、主宰会社のもつ商標権、販売ノウハウ、調理ノウハウの使用許諾、一括宣伝の実施等までもが含まれているのが普通です。

加盟者はまさにそういったものを頼りに、主催者の説明を信頼して契約を締結します。

よってフランチャイザーには、客観的かつ正確な情報を提供する義務があるとされています。(京都地方裁判所 平成3年10月1日)

実際の交渉過程では、法令等による情報開示のほかに加盟後の売上げ・利益の予測に関する情報を提供していることが多いといいます。

フランチャイザーにとって加盟しようとするフランチャイジーの加盟金は運転の原動力ですので、契約する意欲をあおるため非常に楽観的な売上げ予測の説明がなされることも少なくありません。

自然、加盟開業後にその予測どおりに事業が展開せず、損失の生じたフランチャイジーフランチャイザーに対して損害賠償請求をする裁判例も少なくなくないのです。

フランチャイザーの示した売上げ予測の責任を肯定した事例としてパン製造販売(京都地裁 平成3年10月1日)、クレープ販売(東京地裁 平成5年11月29日)、乳酸菌飲料販売(浦和地裁川越支部 平成7年7月20日)、持帰り弁当(名古屋地裁 平成10年3月18日)、サンドイッチ(東京地裁 平成11年10月27日)、コンビニ(名古屋地裁 平成13年5月18日などがあります。

平成に入るころから、フランチャイザーの説明責任を肯定する裁判例は増え始めています。

フランチャイザーフランチャイジーに不適正な情報を与えて契約締結の判断を誤らせることがないようにする信義則上の保護義務に違反すれば、フランチャイザー、つまり本部は損害賠償責任を負うということが認められています。(以上参照:商法(総則商行為)判例百選 (別冊ジュリスト (No.164))

フランチャイズ契約は、経営初心者にとって独立の際に頼りがいのある大きな梯子にもなりえます。

しかしもし契約の際に誠実な説明がなされなければ、単に消費者として損害を被るよりも、さらに深刻な損害を負う可能性も、フランチャイザーという立場には織り込まれているのです。

 

 

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