爆風で消される火遊びもある

横浜FC・カズ、海老蔵“元カノ”とロス旅行…女性週刊誌報じる (サンケイスポーツ)
「歌舞伎俳優、市川海老蔵(29)の前恋人で元テレビ朝日社員のA子さん(31)が「キングカズ」ことJリーグ、横浜FC三浦知良選手(40)と今月上旬、米ロサンゼルスへ旅行に出かけていたと、31日発売の「週刊女性」が報じている。」

民法の770条1項1号をごらんください。

770条(裁判上の離婚)

「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一  配偶者に不貞な行為があったとき。(以下略)」 

(以下参照:民法IV 補訂版 親族・相続 内田貴 東京大学出版会

あなたはもしかすると、今の恋人に奥さんがいても、一線さえ越えなければ文句をいわれる筋合いはないとお考えかもしれません。

しかし離婚に関する最高裁判例を繊細にトレースしていくと、意外にそうともいっていられなくなります。

もともと夫婦は互いに貞操義務を法律的に負っていると考えられており、そのことを間接的に定めているのが不貞行為を離婚原因にする770条1項1号です。

そのため不貞行為の法的効果としてそれは離婚原因となるほか、不貞行為の相手に配偶者から慰謝料を請求できることになっています。

これは貞操義務の履行を配偶者に請求できる権利を、不倫相手が侵害したことを理由とする不法行為を理由として、夫婦関係外へ法的請求を突きつけるものです。

しかし不貞行為があっても、一概に不法行為に結びつくとはいえません。

たとえばその夫婦の関係はすでに破綻してしまっていたのだとしたら、最高裁判例(平成8年3月26日)は、不貞行為による不法行為の成立を否定しています。

そして最高裁はその理由を、不貞行為が配偶者との関係で不法行為になるのは婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為だからであり、婚姻がすでに破綻しているのなら、もはやそのような権利・利益は存在しないのだという理論構築で説明しています。

ポイントは、この理論構築を逆に用いれば、たとえ性的関係がない不倫でも、婚姻共同生活の平和を破壊するような親密な関係があったなら、夫婦関係外へ不法行為をもとにした慰謝料が請求できることになりそうだという点です。

もしあなたの恋人にすでに家庭があり、その家庭が平和を維持していたのなら、一線は越えていなくともあなたにむかって慰謝料請求という爆弾が飛んできてもおかしくないと考えられるのです。

あなたの恋人が夫婦の関係をどう説明しようとも、夫婦の真実はしょせん夫婦以外にはわかりません。

だからこそ民法は、”一方にされたら許せない行為なら、他方もしてはならない”という極まともな判断だけを、不貞行為という言葉に置き換えて770条の中へ封印しています。

 

 

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