神の服を脱がせたら、アルゴリズムが剥き出しになった

暴れ猿の目前で“犬猿”披露…飼育法めぐり2職員が大ゲンカ (産経新聞)
「市によると、けんかをしたのは男性職員(51)と部下の男性臨時職員(71)。今月18日朝、サルを飼育している市営放牧場の事務所で口論となり、つかみ合いを始めたため、周囲の職員が止めたという。2人にけがはなかった。臨時職員は今春採用され、京都市の動物園で飼育に関する研修を受け、「野生ザルは愛玩(あいがん)用ではない。一定の線は引く」として、餌を制限するなど厳しい飼育法をとった。これに対し、上司の職員は「空腹ではサルのストレスがたまる」と残飯を与えるなどしていた。2人はいずれもサルの飼育経験はなかった。市に対し2人は「日ごろの相手への不満が爆発した」と話している。」

人事院規則一三―五(職員からの苦情相談)の2条をごらんください。

第二条(人事院に対する苦情相談)

「職員は、人事院に対し、文書又は口頭により苦情相談を行うことができる。(以下略)」 

[以下参照:行政法〈3〉行政組織法 塩野宏 有斐閣]

公務員の勤務条件は、労働契約ではなく法令によって定められています。

そうした公務員は、使用者にあたる国や地方に対して、職務遂行権、財産的権利、労働基本権などと、それを保障する保障請求権をもっています。

公務員のそうした基本的な権利が侵害されたとき、最終的には裁判所が救済できますが、いつもそのようなオオゴトに頼るのでは、現実的な権利保障とはなりません。

そこで公務員には、勤務条件に対する行政措置要求権と、不服審査が用意されています。

うち、勤務条件の措置要求権は、もちろん勤務条件に関してしかるべき措置をとることを要求するものですが、さらには人間関係のような職場の苦情にも、より簡易な相談手続があることがかねてから望まれていました。

そこで人事院は、職員からの勤務条件その他の人事管理に関する苦情相談の制度を平成12年に設けています。

これが”人事院規則13-5 職員からの苦情相談”という法律です。

それは公務の潤滑のための、法が用意した人間関係の圧力弁だといえるでしょう。(私的解釈)

かつて生命は、神の意志による不変のデザインなのだと信じられていました。

やがてダーウィンが現れると、生命は自然淘汰という、心のない機械的なアルゴリズムによるプロセスで進化するのだということを露わにしています。

公務員の労働環境改善には、たしかに人事院規則13-5が用意されています。

しかし人事院規則を信頼して公務員同士が絶対に殴り合わない進化を、自然淘汰というアルゴリズムによって種に組み込むには、私たちが猿だった時代から気が遠くなるほど繰り返してきた自己複製プロセスが、まだ足りないのかもしれません。

 

 

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