YouTubeが告発の不受理を告発する

「当て逃げ」動画で大騒動 本人解雇、勤務先も謝罪(LivedoorNews)
「問題になっている映像は、車載カメラで夜間の道路を走行している様子を映したもの。一台の白い自動車が被害者の自動車を背後から煽りはじめ、側面に「どん」と体当たりした挙句、逃走するというものだ。被害者側のブログ(現在では閉鎖)によると、被害者側が警察に届けた際に、警察側に「きっとあなたが相手の気に触る様な運転したからでしょ。じゃなきゃ相手もこんなことしないでしょ普通?」などと言われ、当初、全く警察に取り合ってもらえなかったことから、ブログで映像を公開するに至ったという。」

刑事訴訟法の239条1項をごらんください。

第239条

「1 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。」 

捜査をはじめるには、捜査機関が「犯罪があると思料する」(189条2項)ことが必要です。

そして刑事訴訟法上、捜査機関が犯罪ありと考えた理由のことを「捜査の端緒」と呼びます。

捜査の端緒は、捜査機関が職務質問や自動車検問で自ら犯罪を感知する場合と、被害届や告訴等で捜査機関以外の人が犯罪を感知して捜査機関に届け出る場合があります。

そして捜査機関以外の人の届け出のうち、告訴権者や犯人以外の人が犯罪事実を申告して、その訴追を求める意思表示のことを、刑事訴訟法上「告発」と呼びます。

告発は犯罪があると考えれば、239条1項によってだれでもすることができます。[以上参照:田口守一 刑事訴訟法 第四版補正版 弘文堂]

刑事訴訟法の242条には、「司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない」とあります。

しかし警察活動による捜査の端緒が6.5%にすぎないことに対して、被害者の届け出は91.1%にのぼり、つまり警察署の窓口にはそれほど大量の相談が日々持ち込まれているのだといえます。

もし警察署が一般の会社の営業成績にあたる検挙率を高めようとするならば、単純にこの持ち込まれる大量の相談が”告発”にならなければいいわけです。

そのためかどうか、世界的な動画サイトに投稿されて騒ぎが大きくなるような事態を想定しないかぎり、窓口では分母がなるべく小さくされてしまう傾向にあります。

 

 

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