醜聞は狙ったとおり飛び散った

総連本部売買 あまりに筋の悪い話だ(中日新聞)
「総連系の十六の朝銀信用組合は一九九〇年代に破綻(はたん)した。架空名義などを使って総連に融資した六百二十八億円が焦げ付いたまま、総連はRCCから返還を求められている。敗訴の可能性が大きく、そうなれば中央本部の土地と建物など総連の財産は差し押さえられる。今回の売買はその矢先のことである。「五年後に総連が買い戻す条件付きで三十五億円で契約し」、総連は従来通り本部を使用する。しかも購入した方の会社は昨年九月に設立され、元長官は四月に代表取締役に就任したばかりで、購入代金はまだ支払われていないという。強制執行逃れの仮装売買を疑われても仕方がない。」

民法の579条をごらんください。

579条(買戻しの特約)

「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。 」 

民法の579条にいう買戻しとは、売買契約の際の特約によって、売主が代金および契約の費用を買主に返還することで売買契約を解除し、目的物を取り戻すことをいいます。

たとえばわたしがあなたから借金をする時に、お金を返せば買い戻しできるという特約付きでわたしが所有する不動産をあなたに譲渡するようなことです。

条文の文言上、その目的物は不動産に限定されますし、その買戻しの特約は売買契約と同時になすことが必要です。

買戻権は、買戻権者、今回でいえば朝鮮総連が買戻義務者、つまり元公安長官へ意思表示することで行使できます。

このときもし長官が総連建物を第三者に譲渡していたとしても、買戻権が登記されていれば、判例理論上、朝鮮総連は建物を買った第三者に対して堂々と買戻しを宣言できます。

それほど買戻権者の権限は強く、つまりそれは本来売買というよりも所有権を手放す気のない人が担保的に不動産を差し出す場合に用いることを想定した契約形態なのです。

金銭を総連に融通するわけでもないのに、このような結局売買であって売買ではないような買戻し特約付きの契約を元公安調査庁長官がなすことにはどのような意味があったのでしょう。

すくなくともニュースを読むわたしやあなたには、公安調査庁という存在の非絶対性を憶測させました。

もっとも驚愕したのは内閣府自身だったかもしれません。

そして社会に公正をもたらすはずの行政が、醜聞をただ恐れるなら、社会に公正が枯渇することになるはずです。

 

 

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