フリーライダー:最強の商人

中国“国営”遊園地の暴挙にアメリカ政府も激怒(livedoornews)
「中国の国営遊園地「北京石景山游楽園」にアメリカ政府が怒っている。国営であるにもかかわらず、「ディズニーランドは遠すぎる」というテーマのもと、キャラクター許可などを一切取らず、スタッフがディズニーキャラクターに扮しているのだ。また園内にはシンデレラ城などのレプリカも置かれている。」

WTO協定の3条1項をごらんください。

第3条(世界貿易機関の任務)

「1 世界貿易機関は、この協定及び多角的貿易協定の実施及び運用を円滑にし並びにこれらの協定の目的を達成するものとし、また、複数国間貿易協定の実施及び運用のための枠組みを提供する。」

正義としての法の効用は、いくつかの顔があります。

井上達夫教授の著書「法という企て」によれば、主なそれは(1)フリー・ライダーの排除、(2)ダブルスタンダードの排除、(3)既得権益と権利の区別作用、(4)集団的エゴイズムの抑制です。

(1)にいうフリー・ライダーとは、何らかの制度が提供する便益は享受しながら、その制度を維持するのに必要な負担は他者に転嫁する人達を指します。

フリー・ライディングは当然に、彼の利得を最大化しますので、もし世界が他者によるフリー・ライディングを抑制できないのなら、自分だけがこれを我慢する理由がありません。

どこかの国の権利がフリー・ライドされない保障をどの国ももっていないとしたら、その国もまたフリー・ライドせざるをえず、それがまたどこかの国が他国の権利にフリー・ライドする口実となり、それがまたわたしたちの国がフリー・ライドする口実となる、という目もくらむような悪循環に陥ります。

最後には現実にフリー・ライディングする国がなくとも、世界中の国家がフリー・ライディングを強制されることになり、ここにいわゆる囚人のジレンマが発生します。

その循環を排除するには、各国の思惑から独立した”枠組み”が必要です。

フリー・ライダーが利益を享受できるのは、言うまでもなく開発コスト、成長コスト、維持コストを他者が負担しているからです。

法の正義の不変主義的要請はこれを排除します。(参照:井上達夫 法という企て 東京大学出版会

世界貿易機関協定はその3条で正義の枠組みを提供すると宣言しています。

それは枠に乗っからないメンバーが出れば、囚人達は最初からやり直しだという意味です。(私見)

 

 

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