機関にうんざりして女神はトーチをかかげた

保釈金:立て替え業者急増 刑事被告人対象に「担保不要」(毎日新聞)

「刑事被告人が保釈の際に裁判所に納める保釈保証金を立て替える専門業者がある。多いところでは、年間で800件以上も扱っており、年々増える傾向にある。保証金の額は、裁判所が事件の内容や被告の資産状況などから決める。「被告の家計が苦しい場合に助かる」と評価する声がある一方で、「第三者である業者の介入は、制度の理念を揺るがしかねない」など疑問視する法曹関係者もいる。」

刑事訴訟法の93条2項をごらんください。

第93条

「2 保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。」 

保釈金とは、被告人を保釈しても再出頭することや、彼が証拠を隠滅しないことの保証金として裁判所が納付を命じる一定の金額のことです。

93条2項によれば、その金額は、犯罪の性質および情状、証拠の証明力ならびに被告人の性格および資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとあります。

しかしここでいう”相当”という言葉は”懲らしめるに十分な”という意味ではなく、”公平な額であれ”という意味です。

実は戦争に負けてすぐ、マッカーサーによって差し出された憲法の草案には、以下のような条文が存在していました。

「第35条 過大な保釈金を要求してはならない。また残虐または異常な刑罰を科してはならない。」

憲法で保釈金の話まで言及する必要はないということで削除されていますが、自由の国の哲学上、”過大すぎる保釈金”という現象は、「残虐な刑罰」や「異常な刑罰」と同列に語らしめる公権力の横暴という認識だったのです。(私見)

保釈金は保釈を許すという趣旨からさかのぼれば、被告人の出頭を確保できれば済むだけの負担にとどめるべきですし、彼が納付の見込めない程の金額を決定するのは被告人という立場を法学上導き得ないほどみじめなものにしてしまいます。

(被告人とはあくまで罪を疑われて訴追された立場にいる人のことで、罪人のことではありません。)

そして現在、わたしたちの国の保釈金額の決定は、平均的にみて、高額に傾きすぎているといいます。[参照:口述刑事訴訟法〈中〉光藤景皎 成文堂]

わたしたち自身がいつ誤って何かの事件の犯人として捕らえられるのかわからないことを考えれば、刑事訴訟システムは徹頭徹尾公平であって欲しいものです。

そしてそれ以上に、裁判所は無機質な手続で保釈額を決定する機関ではないことを祈っています。

 

 

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