ヒンズー教徒、信仰のあまり、舌を切り取り女神に捧げる(ExciteNews)
「インドの献身的な男性のヒンズー教徒が、寺院で自分の舌を切り取り、女神カーリーに捧げ、病院に搬送された。警察が10日が明らかにした。この男性は無職のスレシュ・クマーさん(24)。医師たちが傷を縫合したが、もう話すことは不可能だろうという。」
刑法の61条1項をごらんください。
第61条 「1 人を教唆して犯罪を実行させた者には,正犯の刑を科する。」 |
アムヴィカの額から生まれた女神、カーリーは、悪魔の大群を殺し、その長であるチャンディとムンダーの首を切り落とす力を生まれつき備えていました。
以後、彼女はチャームンダーとして知られるようになりました。
冷酷で残忍なチャームンダーは死体を食べますが、彼女はいつまでも痩せ細ったままです。
なぜならば、彼女の空腹は決して満たされることがないからです。
変わらぬ苦痛のため彼女は恐ろしい叫びを世界に向けて発し続けます。
インド中央博物館に所蔵されている、10世紀のチャームンダーの壊れた石像は、大きくロを開け、腫れ上がった目をし、もつれた髪の冠をした恐ろしい姿をしています。
彼女は火葬場で踊ったり、彼女の犠牲者である死体の上に勝ち誇って立ったりします。
そもそも悪魔の大群を退治するために、全ての男神が彼らの力を合わせて獰猛な女神ドゥルガーをつくり出しています。
続いて女神ドゥルガーは、自分自身からさらに違った姿をつくり出しました。
それが暗黒の女神カーリーとなり、さらに恐ろしいチャームンダーの姿をつくり出しました。
ただしヒンズー教徒は輪廻を信じており、彼らにとって女神が表す死と破壊は、新しい生を約束する解放をも意味しています。(以上参照:元型と象徴の事典 ベヴァリー・ムーン 青土社)
日本の刑法にいう教唆とは、誰かに犯罪実行の決意を生じさせることをいいます。
したがって教唆犯が成立するためには、正犯が犯罪を実行していなければなりません。
しかし傷害罪の構成要件は「他人の体を傷つけること」であるため、自分の舌を切り取った本人には刑法上の罪が成立しません。
よって破壊と殺戮の女神、カーリーが仮にその行為を唆していたとしても、彼女を教唆犯に問うことはできません。
カーリーとはサンスクリット語で「黒いもの」。
暗黒の女神、カーリーの壊れた石像を見ていると、不思議な気持ちが湧くことを否定できません。
我が身の脆さを想うほど、死を司るその姿は美しく見えてくるのです。