イージスの秘密がテューポーンを生むだろう

海自警務隊と捜査協力 イージス中枢情報漏えい(東京新聞)
海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)の護衛艦「しらね」乗組員の男性2等海曹(33)がイージス艦のシステムの中枢情報などを隠し持っていた問題で、神奈川県警は4日、全容解明に向けて海上自衛隊の警務隊と協力して捜査を進めると発表した。「警察庁と防衛省との犯罪捜査に関する協定」に基づくもの。警察と自衛隊が捜査協力するのは極めて異例という。2曹の自宅から押収したハードディスク(HD)にはイージス艦の中枢システムの概要が把握できるデータなどが記録されており、こうした情報は日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法が規定する「特別防衛秘密」に該当するとみられる。」

秘密保護法の4条をごらんください。

日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法

第四条 

「特別防衛秘密を取り扱うことを業務とする者で、その業務により知得し、又は領有した特別防衛秘密を過失により他人に漏らしたものは、二年以下の禁こ又は五万円以下の罰金に処する。」 

無敵の鎧、イージスを纏ったアテーナーが誕生した様子は壮絶です。

その父ゼウスは、妻メーティスが懐胎中にその妻を喰ってしまいます。

しかし父ゼウスは凄まじい頭痛におそわれ、これを直すためにヘーパイストスが彼の頭を斧で打ちます。

するとゼウスの頭蓋を割って、勝利の雄叫びを高々とあげ槍を振り回しながら、完全武装したアテーナーが生まれてきます。

そのあまりに恐ろしい光景を見た神々はおびえ、大地はこだまし、海には黒い波が持ち上がったほどです。

その誕生の様子からもわかるように、アテーナーにとって戦いは至上の喜びでした。

彼女の胸は無敵の鎧アイギス(イージス)が守っており、それは蛇の縁取りと中央に恐ろしいゴルゴーの頭がついていました。

アテーナーの鎧、アイギスからその名をとった対空防衛システム、イージスの開発はそもそも第二次世界大戦中、日本による特攻機のような軌道で襲いかかる航空目標に対して米軍が頭を悩ませたことからはじまります。

現在そのシステムはレーダーや衛星、搭載ヘリコプターなどからとどく多角的な情報、さらに対潜、対空など多チャンネルのローカルエリアネットワークを、内部接続装置で戦闘形態に応じて組み合わせ、同時多発的な攻撃に対応して指揮できる中枢となっています。

情報がイージスという防空システムの中でどのような処理をなされているか、その機密こそ、無敵の鎧の名を冠した艦隊の生命線なのだといえるでしょう。

その構造や性能、製作、保管又は修理技術などを特別防衛秘密ということばで守り、秘密保護法という特別な法的セキュリティをかけようとするのもそのせいかもしれません。

実際、中国にはランゾウ級駆逐艦、ドイツにはザクセンフリゲイト、イギリスには45型駆逐艦というそれぞれイージスに対抗する防空システムが開発されており、情報を手ぐすねを引いて待つ先はいくらでもありそうです。(参照:イージス艦入門―最強防空システム搭載艦のすべて

ところでアテーナーが生まれた後、ゼウスの別の妻ヘーラーはゼウスが一人でアテーナーを生んでしまったことに腹を立て、あてつけのように彼女も一人で怪物、テューポーンを産んでしまいます。

テューポーンの下半身はとぐろを巻いた蛇で、翼は太陽を覆い隠す恐ろしい形をしています。

自衛官の情報漏洩により、どこかの国にテューポーンが生まれてしまったとしたら、その罪は秘密保護法4条が規定する罰だけではとてもあがなえるものではありません。

 

 

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