NASA:謎の巨大六角形画像公開 「カッシーニ」撮影(毎日新聞)
「米航空宇宙局(NASA)は27日、米欧共同無人探査機「カッシーニ」が撮影した、土星の北極上空を覆う六角形の渦状構造の画像を公開した。80年に米探査機「ボイジャー」が発見したもので地球4個分の大きさだが、26年後の現在も残っている。NASAは地球の極地方で形成される低気圧の一種に似たものと推測しているが、六つの辺が安定的に維持されている理由は分かっていない。」
憲法の96条1項をごらんください。
第96条 「1 この憲法の改正は,各議院の総議員の3分の2以上の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その過半数の賛成を必要とする。」 |
1901年、アンリ・ベナールという名のフランス人の学生が、鍋を上から撮影するためのカメラを設置、さらに、水の動きを見やすくするため、液体に少量の粉末を加えて加熱する実験を行いました。
鍋のなかの液体は最初、静止したままですが、さらに少しずつ火を強くしていくと、実はほぼ完壁な六角形の配列を作りだします。
それからさらにその現象を詳しく調べたべナールは、それぞれの六角形の内部では、暖まった液体が上に向かって流れ、冷たい液体は境界部で沈み込んでいることを発見しました。
この現象を、現在「べナール対流」と呼びます。
それから一六年後、イギリスの物理学者レーリーは、液体の粘性が分子のせめぎ合いを起こしていること、そしてこのせめぎ合いが規則性のなかったところに突如、正六角形という規則的な秩序を出現させる原因であることを示しました。
換言すればベナールの実験は、相互作用をしている水の分子からなるネットワーク内に唐突に規則性が自然に生じることを示しています。
イギリスの物理学者マイケル・ファラデーは、実験で水の入った容器を静かに上下に振っていたときに、均一性が崩れ、液体は突然一連の山と谷を構成し、縞模様やチェック模様を作ることを発見しています。
他にも空の箱に普通の砂を入れて上下にかなり激しく揺すってやると、初めは平らだった砂の層が突然重なり合って、谷で隔てられた細長い帯状のパターンの尾根を作ったり、正方形や六角形の美しい網目の形につながった尾根を作ったりします。
それらは分子が集まるどのネットワークにもある、パターンを作りだそうとする力とパターンを壊そうとする力のせめぎあいが作り出す文様です。(参照:複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン 草思社)
ところで憲法の98条1項には、わたしやあなた国民の憲法改正権力が記述されています。
これは憲法学の故 芦部信喜先生によれば、国民主権という新しい憲法制定権力が、その姿を変えて自らを戦後憲法の中に組織化した、その姿だということになります。
ネットワーク科学は、雨水がつなぐ河川や、個人がつなぐ社会、パーソナル・コンピュータ同士が繋ぐワールドワイドウェブなど、あらゆる分子のネットワークがある時点で突然、いつもそのあらかじめ決められたような規則性を露わにすることを解明しはじめています。
たしかに何もない宇宙に、唐突に森と海をたたえたこの星が現れたことを考えれば、相反するエネルギーのせめぎ合いで無から有を生むネットワークの秘密が万物を貫いていてもおかしくありません。
芦部先生も憲法改正権の解説をもって「その憲法が真に憲法たるならば、いつもそこには自然権の文様が現れるはずだ」と念押しされていたのかもしれません。(私見)
群衆のせめぎあいが紡ぐ条文を見守るように、今日も空に赤い正六角形の眼が浮かんでいます。