亡き才女のためのパヴァーヌを捜そう

British teacher found dead in a bath of sand near Tokyo (thisislondon.co.uk)
「Lindsay, whose family live in a £500,000 detached house in a cul de sac, went to Japan last October after gaining a degree at Leeds University, believed to be in biological sciences. She was one of hundreds of bright young Britons, fascinated by Japan, who spend 12 months or more there after graduating to teach English as a foreign language. 」

(私訳)

「リンゼイはリーズ大学で単位を取得後、昨年10月に日本に向かった。彼女もまた、日本に魅せられそこで長くを過ごす、若く聡明な英国人のうちのひとりだった。」

憲法の22条1項をごらんください。

第22条

「何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転及び職業選択の自由を有する。」 

憲法はその3章を「国民の権利及び義務」と名付け、数々の基本的人権の保障を国家に命じています。

確かに日本人が海外へ旅行にでかけること、また日本に戻ってくることは22条が保障していることは明らかですが、外国人が誰でも自由に私たちの国に出入りできるかどうかは別の問題になります。

学説上の通説は、「憲法22条は外国人の入国の自由を保障しておらず、外国人の入国の規制は、国際慣習法上、主権の属性として国家の裁量に委ねられている」と考えています。

最高裁判例も、英語教師として来日後、反戦運動など政治活動を続けたアメリカ人、ロナルド・アラン・マクリーン氏の在留期間の更新申請を法務大臣が不許可としたマクリーン事件と呼ばれる争いについて以下のように結論づけています。

憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、

このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、

特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができる」。(昭和53年10月4日)[参照:憲法〈1〉 第四版 野中俊彦他 有斐閣]

すなわち判例理論上は、私たちの国へ入国する自由は、外国人には保障されていないという判断が現在までなされているのです。

それは明白に公安や良俗を乱すであろう外国人だけに向けて設けられた、”選択のための門扉”だと形容することが可能です。(私見)

今回、私たちの国が才女リンゼイ・アン・ホーカーさんへその門を開いてしまったことは、結果的に彼女の人生を粉々に砕いてしまいました。

わたしたちは彼女を殺めた者を取り逃がしている場合などではなく、早々に彼を捜し出して、門扉のこちら側に”法治の奏”が満ちていることを表さなければなりません。

そうでなければ、公安のために外国人に向けて設けたはずの門扉のこちら側こそ、彼らにとって徐々に野蛮に見えてくるはずです。

 

 

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