権利外観法理と不可逆の商機

夏川純、年齢詐称を認める(オリコン)
「一部夕刊紙で年齢詐称疑惑が報じられ、その後疑惑を否定していたグラビアアイドルの夏川純が一転、本日(22日)更新の公式ブログ『Natsujunの日記』で詐称を正式に認めた。「ファンの皆様へ」と題し、「今、一部メディアで私の年齢につきまして色々な報道がされていますが、お騒がせして、申し訳ありません。私の本当の年は1980年9月19日生まれの26歳です」と発表( 夏川純の写真はこちら )。その理由について「今の事務所に移った時、スタッフと相談して名前も変え、生まれ変わったつもりになり、又、10代の方々に応援してもらいたい気持ちが強く、19歳ということにしてしまいました」と告白している。」

商法の9条2項をご覧下さい。

第9条

「2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。」 

商業登記とは、商法や会社法の規定により、商業登記簿に記述される記録のことをいいます。

それはたとえば会社の代表者が誰なのか、所在地はどこなのか、資本金はいくらの会社なのかといった情報です。

商業登記は、商人や会社に関する取引上重要な事を公示することで、商取引の円滑と確実を図り、利害を調整することを目的としています。

取引しようとする一般の人からすれば、取引上重要な事項を登記で公示されれば、調査の手間が省け、不測の損害から守られることになります。

他方で商人や会社の側としても、いちいち会社の情報を先方に伝えなくとも登記により公示されている以上、先方は知り得たものとしてビジネスのスピードを上げることができます。

つまり商業登記制度とは、商人の利益とわたしたちの利益の双方の要請が合致して存在するものなのです。

もし、登記の基礎となる事実がないならば、その点については登記がなされたとしても効力が生じません。

しかしながら、それではわたしやあなたが登記を信頼するための根拠が確保できません。

よって商法の9条2項は権利外観法理に基づいて、故意又は過失により不実の事項を登記した人は、その事項が真実に反することを善意の第三者には対抗できないものと定めています。

[参照:新・会社法100問 会社法立案担当者の会 ダイヤモンド社]

権利外観法理とは、真実に反する外観を作出した人が、その外観を信頼してある行為をなした人、たとえば夏川純さんによる23才だというプロフィールを勘案の上、写真集やDVDを購入した人が損害を申し立てれば、夏川さんはその人に対して外観に基づく責任を負うべきであるとする法理論です。

もちろん上記の例はレトリックにすぎませんが、イメージを商材とするビジネスにおいて、一般公衆には権利外観法理上の責任を問う道が事実上閉ざされている点は、逆にここにある商行為の特徴をひとつ記述しています。

そのビジネスは、”言ったモノ勝ち”なのだという特異構造をもつということです。

 

 

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