臨界:青い光

北陸電力が志賀原発の臨界事故隠す、制御棒外れ15分(読売新聞)
「制御棒が外れたのは、99年6月18日午前2時17分ごろ。制御棒1本の急速挿入試験のため、残り88本を動かす水圧制御弁を閉じる作業を進めていたところ、誤操作で3本が炉心から抜けた。原子炉の制御システムは、核分裂反応が継続する「臨界」に陥ったことを感知し、緊急停止信号を出したが、この3本を再挿入するために必要な加圧用窒素タンクの準備が不十分だったことなどから、ただちには再挿入できなかった。結局、弁の操作などで3本が炉心に入り、臨界が終息したのは15分後だった。臨界時の出力は定格の1%未満だったが、原子炉の制御が事実上、15分間効かない状態が続いたことになる。」

原災法の第10条1項をご覧下さい。

原子力災害対策特別措置法

第10条(原子力防災管理者の通報義務等)

「1 原子力防災管理者は、原子力事業所の区域の境界付近において政令で定める基準以上の放射線量が政令で定めるところにより検出されたことその他の政令で定める事象の発生について通報を受け、又は自ら発見したときは、直ちに、主務省令及び原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、その旨を主務大臣、所在都道府県知事、所在市町村長及び関係隣接都道府県知事に通報しなければならない。(以下略)」 

臨界事故とは、核燃料物質がつぎつぎと核分裂反応の連鎖を起こす臨界量を越えてしまい、爆発的に増加しはじめ人間には制御できなくなる状態をいいます。

これをふせぐため核燃料物質は少量に分割して保管し、専門知識をもつ技術者が十分注意を払って取り扱わなければなりません。

にもかかわらず平成11年9月30日、茨城県東海村にあるJCOはそのウラン加工工場で臨界事故を起こしてしまい、二人の作業員が重篤な放射線被ばくにより死亡しました。

これをうけて原子炉等規制法の特別法として、原災法が2000年6月16日から施行されました。

そして事故発生時の初期動作を適格に確保するため、その10条第1項は一定の事象が生じた場合の通報を原子力事業者の原子力防災管理者に義務付けています。
(以上参照サイト:原子力図書館 http://mext-atm.jst.go.jp/

それは、中性子線の測定器など特別な機器や人員が存在せず、実際にそこでなにが起こっているのか全く判別できなかった東海村の悲劇を糧にした条文です。

本法施行前だとはいえ、わたしたちが原子力がアンコントローラブルになっていた事態を事業者から知らされるまで、8年の歳月を要してしまいました。

いったいその時周囲何キロ範囲まで中性子線が周囲の生活圏を貫通していったのか、今となってはわかりません。

もし原災法という、原子力災害からわたしやあなたの命、身体及び財産を保護することを目的に設立された法律が今後も軽んじられる事態が続くなら、法とは違った角度で事業者の真意を見つめる作業が新たに必要になります。

 

 

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