ガラスボートの上で銛を研げ

松岡農相の光熱水費問題、閣僚からも「説明不十分」(読売新聞)
「13日の閣議後の記者会見で、松岡農相資金管理団体の光熱水費問題について、各閣僚から擁護論が出る一方、農相が説明責任を果たすよう求める声も上がった。尾身財務相は「(農相は)政治資金規正法にのっとって適切に届け出をしている。ルール通りのことをやっているということで私はいいと思う」とし、冬柴国土交通相も「政治資金規正法にのっとっているのであれば、それ以上言うことはない」と語った。ただ、高市沖縄相は「今の説明では私自身も分からない。具体的にこういう品目でいくらかかったと、ざっくりとなら出せるのではないか」と強調。山本金融相も「通常の常識の範囲内に収まるまで議論を尽くさないと説明責任は全うできない」と述べた。」

政治資金規正法の第12条をご覧下さい。

第12条(報告書の提出)

「政治団体の会計責任者は、毎年12月31日現在で、当該政治団体に係るその年における収入、支出その他の事項で次に掲げるものを記載した報告書を、その日の翌日から3月以内に、第6条第1項各号の区分に応じ当該各号に掲げる都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければならない。」 

わたしたちの国の政治は、わたしたちが直接運営しません。

そのかわりに代表者を選んで国会に送り込む、いわゆる議会制民主主義をとっています。

この議会制民主主義で政治家が本分を発揮しようとすれば、主義・主張を実現するために団体を作って、議会の多数派を形成しなければなりません。

そのためには選挙の時だけではなく、日常的に多様な政治活動が必要になります。

しかし、そのためにはなにはなくとも大量に先立つものが必要になります。

それは人件費であったり、事務費、通信費、調査費、あるいは交際費などの、つまりお金です。

そのためそういったお金をどこから調達してくるのかは、政治家の頭の中を常に占領する避けがたい問題になります。

逆に言えば政治を自分のビジネスに都合よく動かしたい団体からは、まさにそこがつけいる隙になります。

そこで代表者を送り込む私たちとしては、なんとかそこから議員が特定勢力のパシリになることを避けるための手だてをたてなければなりません。

しかし団体の献金などを直接法で封じてしまうことは、憲法の保障する表現の自由・政治活動の自由を制約してしまうことにもつながります。

そこで政治資金規正法は、せめて政治資金の流れを国民の前にガラス張りで公開し、わたしたちの判断を仰ぐために昭和23年に成立した法律です。

つまりこの法律は、やたら濁りやすい議会という海に収支報告書というガラス底のボートを浮かべ、いつも海底をなるべくわたしたちに見えやすくしようというような存在です。

もしそのガラス底をのぞき込むひとが海底に歳費を喰う魔物を見たとしても、船の底がガラスであることだけが法律ならば、わたしたちはその魔物をみすみす見送らなければなりません。

「農相は政治資金規正法にのっとって適切に届け出をしている」という言い分は、わたしたちに銛で魔物を刺すための新しい条文を要求しています。(私見)

 

 

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