自尊というブレーキはオプション装備

研究費の半分以上余剰金に 厚労省の補助金詐欺事件  (熊本日日新聞)
「調べなどによると、厚労省は「障害保健福祉総合研究事業」として京都府内の大学の主任研究者に、2001-02年度で計約3000万円の補助金を交付。中村容疑者は当時の自分の部下2人に一部の研究を分担させるなどした。部下2人の研究には01-02年度で計約370万円の補助金が分配されたが、半分以上の約210万円が余剰金となり、非政府組織(NGO)レインボーブリッヂ代表代行の小坂博幸容疑者(54)=同容疑で逮捕=が社長をしていた会社との架空取引に回された。」

補助金等適正化法の第11条1項をご覧下さい。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律

第11条(補助事業等の遂行)

「1 補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用をしてはならない。」

補助金とは、行政主体が公益上の必要に基づき交付する金銭的給付をいいます。

補助金は行政の目的達成のための一手法として多様な用いられ方がされており、交付につき昔から不正が発生することから、その支出の適法性が問題とされてきました。

そもそも憲法は、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」として公金の流出に原則歯止めをかけています(89条)。

しかし一方で公益上の目的のために公金を特定の事業者に移転する必要がある場合も認め、補助金の交付や交付後の監督に関する規制法として制定されているのが補助金等適正化法です。

しかしそれでも役所が用意した現金を狙う人たちはいます。

そこで補助金等適正化法11条の規定に違反して補助金等の他の用途への使用又は間接補助金等の他の用途への使用をした人には、3年以下の懲役か、50万円以下の罰金が命じられ、あるいは併科されます。(30条)

補助金は、わたしたちが公益上の目的達成のため、国や地方から貴重な財源を事業者に移転することを許した特別措置です。

しかしその思いを、臆面なく懐に引き入れる輩もまたいつの時代も存在することを、補助金等適正化法は今後も予告しつづけます。

 

 

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