体を壊した有名人と債権の末路

飯島愛 体調不良で芸能界引退へ (スポーツニッポンより引用)
「飯島は体調不安とだけ話しており、詳しい症状は不明。自身のブログには以前から腎機能の弱さに苦しむ様子を記していた。 昨年11月12日と12月3日には、風邪による発熱などを理由にレギュラーを務めるTBSの生放送「サンデージャポン」(日曜前10・00)の出演をキャンセル。そのころ、ブログで「背中の鈍痛とだるさを感じながら、またかと…気がめいる」「あの痛みは、堪(た)え難い。もう嫌だ」と膀胱(ぼうこう)炎による苦しみを吐露。トイレの際の激痛ぶりなどを生々しくつづっていた。」

民事執行法の172条をごらんください。

第172条(間接強制

「1 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。」 

債権とは、ある人が誰かに対して一定の行為を請求する権利のことをいいます。

間違いやすいのですが、例えばお金を貸している人の債権とは、お金そのもののことではありません。

あくまでお金を返すという行為を借りた人に要求できる権利のことをいうのです。

もし強引に彼の家から現金を持ち帰れば、たとえあなたがお金を貸していたとしても場合によっては刑法上の犯罪を構成することになります。

そこで債務者が任意にその行為をしないときには、債権者は裁判所に訴えて強制的に履行してもらうことができます。

これを現実的履行の強制といいます。

間接強制とは、直接強制、代替執行とともに強制履行方法の一つです。

もし一定期間に債務を履行しないときはお金を支払わせるという執行によって、本来の債務の履行を間接的に強制するのです。

TV番組がタレントさんと出演契約をしたならば、その債権の目的は出演というタレントさん自身の意思による履行にあり、タレントさんの笑顔やコメントそのものは債権の目的ではありません。

この場合、引退を決意したタレントさんにTV出演を強制させるような、自由意思に反する強制をしたとしても、視聴率のとれる魅力的なコメントや笑顔は期待できないからです。

よってもしこのような債権の履行がなされない場合、間接強制には適しません。

穏和な話し合いで終われば問題ありませんが、仮に長期契約があったとしてこじれたならば、TV局の債権はタレントさんに損害賠償を請求できるだけに終わります。

それは”Talent”とは替えのきかない才能をあらわす言葉であることを、法律的に勘案した結論です。

 

 

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