タグをもらおう、できるだけ高級なヤツを

超お下劣表現でJALスッチー7000人個人情報データ化(サンケイスポーツ)
「その数、少なくとも7000人分。ほとんどが女性客室乗務員の個人情報だった。リストは一部に流出しており、この日発売の「週刊朝日」が入手して報じたところによると、「ブス」など差別的な表現をはじめ、「ジャイアンツB投手の彼女」「男好きするタイプ」「右翼」「父なし子」「流産」などの情報まで記載されていたというからあきれるばかり。」

労働基準法の3条をご覧下さい。

第3条(均等待遇)

「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」 

労働基準法の3条は、わたしたちが働く場所で国籍や考えていること、社会的な属性によって労働上不利益な取り扱いを受けることだけを直接禁忌としている条文ではありません。

それは身分、信条、国籍などが扱いを不当に違えさせるというその思考方法が、わたしたちが一日の大半を過ごす職場でまかりとおることによって、さかのぼってそうした思想を禁じた近代憲法を実質無力化してしまう事態を警戒したものです。(私見)

たしかに憲法の14条が「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めてはいます。

しかし職場で憲法14条に明らかに違反する事態があったとしても、憲法だけをツールとして労働者が戦おうとするなら、ただ単にその効力が争われるに終わります。

そこで労基法の3条が、119条に罰則まで用意してこれを禁止し、さらに13条でそうした行為の無効化を予告しています。

普通、法律の条文で”信条”という言葉が用いられた場合、これが宗教的な核心に限定されるのか、あるいは政治的な志向も含むのかについては、あらゆる法分野で争いが起こりがちです。

しかしこと労基法3条に限って言えば、学説・判例ともその”信条”という文言に政治的信条が含まれることを認めていますし、解釈例規もほぼ同旨です。

もともと国家が特別法を用意し、国家が資金を与え設立した国策会社であったJALの歴史から考えて、その所属する女性達一人一人に労組が密かに品のないタグ付けをしていたことは確かに気味の悪い行為です。

しかしその極秘業務が長年通用していたことは、それ以上にその働く場所が案外みじめなものだったことをあらわしているともいえます。

なぜならそういった「人間はタグ付けによって便利に規定できる」と考えていた上層の労働者達自身、”自分とは、タグをつけられ得る存在である”という、人間に対する随分安い価格設定を肯定していたことに他ならないからです。(私見)

 

 

法理メール?  * 発行人によるメールマガジンです。