警察権:ワッパの数だけのし上がろう

鹿児島県議選事件、無罪判決受け被告側が国賠提訴へ(読売新聞)
「2003年の鹿児島県議選を巡る選挙違反事件で、公職選挙法違反に問われた同県志布志市の元県議中山信一被告(61)ら12人に対し、鹿児島地裁の谷敏行裁判長は23日、無罪(求刑・懲役6月~1年10月、中山被告らを除く10人に追徴金6万~26万円)を言い渡した。中山被告らは近く国家賠償請求訴訟を起こす方針。」

警察法の2条2項をご覧下さい。

第2条

「2 警察の活動は、厳格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、その
責務の遂行に当つては、不偏不党且つ公平中正を旨とし、いやしくも日本国憲法
の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあつ
てはならない。」 

警察は他の公共機関と同じく、一定職務に範囲を限られており、その範囲において公的義務を負い、公的機能を有します。

これを警察の債務、及び警察の権能といいます。

そして警察の債務は2条1項に定められている範囲であるので、警察の権能もまたこの範囲に限られなければなりません。

もしこの範囲を警察権力が超えるなら、それは権能の濫用と呼ばれることになります。

権能を濫用することは、警察の相手方たる個人の自由、権利に対して不法の干渉を加えることになるのです。

わたしたちにはその暮らす社会の秩序を乱す権利など亡く、ひとの生命・財産や公安に迷惑をかけることは許されていません。

おまわりさんの本来の役割とは、誰かが自由や権利を濫用することを取り締まり、それを制限して適当な範囲におさめるというところにあります。

しかしながら、取り締まる側の警察がその任務の範囲を超えてしまっては、逆にわたしたちの自由や権利に干渉してくることになります。

このため警察法は、警察権の濫用が起こらないように、警察組織の点について工夫を凝らしており、また濫用の結果、私人が損害を受けた場合、国家の賠償責任、や警察官の刑事訴追などの救済手段も認められています。

そのうえで、なおかつ権能があれば濫用が生じやすいので、警察機関や警察官に深く自戒をうながしているのが、警察法2条2項です。

[参照:警察法逐条解説 須貝 脩一]

一生懸命なおまわりさんたちナシでは、私たちの暮らしは絶対に成立しません。

しかし一旦出世のためのノルマを前に、2条2項をただの綺麗事に読んでしまうなら、そこには手錠と拳銃をぶら下げたもっともタチの悪い公務員だけが裸になってしまいます。

そしてそれがただの杞憂では終わらなかったことを、幻想の公選法違反事件が教えてくれているのです。

 

 

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