プールの名は不条理

欠陥住宅補償、売り主に保険加入義務・09年度メド (日経新聞)
国土交通省耐震強度偽装の再発防止策の一環として、欠陥住宅の被害を補償する新制度をまとめた。2009年度半ばをめどに、一戸建てやマンションなどすべての新築住宅の売り主に「欠陥住宅保険」への加入か、補償に充てる資金の供託を義務付ける。売り主が経営破綻しても欠陥住宅の補償を確実に受けられる仕組みを整え、被害者が保険金や供託金で補修や建て替えをできるようにする。国交省は新制度を盛り込んだ「特定住宅瑕疵(かし)担保責任履行確保法案」を3月6日にも閣議決定し、今国会に提出する。」

民法の570条をごらんください。

第570条〔瑕疵担保責任

「売買の目的物に隠れたる瑕疵ありたるときは第566条〔担保責任〕の規定を準用す

但強制競売の場合は此限に在らず」 

瑕疵担保責任とは、売買の目的物に隠れた欠陥がある場合に、売主が買主に対して負う担保責任のことです。

担保責任とは、給付されたものに瑕疵がある場合に、給付した人が相手方に負う責任のことで、払うお金と給付される物の対等性を保証して当事者間の公平を図ろうとするシステムです。

ここで隠れた瑕疵というのは、普通の人が発見できないような欠陥で、普通そういった物がもつ性質を欠くことをいいます。

つまり瑕疵担保責任は、見つけにくいキズを飼い主が初めて見つけたとき、それを知ってから一年以内なら売り主に損害賠償を請求できるようにして、深い部分まで徹底して当事者同士の公平を図ろうとしています。

新築住宅の場合、品確法95条で10年間の瑕疵担保責任を追及できるようにはなってはいますが、施工業者が倒産していれば追求のしようがありません。

しかも元1級建築士姉歯秀次被告の行ったケースのような故意や重過失による欠陥住宅の場合は、イレギュラーだとして保険会社は保険金を支払ってくれません。

このため新法案は、そうした保険金給付の対象外となったケースを救済するため、建設業者による供託、宅地建物取引業者による供託、新規住宅瑕疵担保責任保険法人の指定などを行い、公平の理念を新築住宅の世界にも行き渡らせようとしています。

そもそも設計者がひどい人であるケースほど救いが受けられないという業界構造では、たしかに供給物と対価のバランス設計が最初から崩れているといえます。

そして下請け、孫請け、曾孫受けを組み込むことで生み出されてきたその不均衡は、業界上部に不条理な利益をプールさせてきたはずです。

特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律案はそのプールを一部決壊させ、あるべき均衡を取り戻そうとしているように見えます。(私見)

 

 

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