継続役務:兎はあらかじめ笑う

英会話のNOVAに立ち入り検査 解約トラブルで経産省(朝日新聞)
「さらに、同社の解約に関する事項の説明が、特商法が禁じる「不実の告知」に当たる疑いも浮上している。 NOVAは新規の受講者を勧誘する際、まず住所、氏名などを登録。数日後に受講コースを振り分けるレベルチェックをし、契約内容を決めて正式な申し込みを受ける。 特商法は契約後、一定期間内なら無条件で解約できる「クーリングオフ」の制度を定めているが、受講者が解約を申し出ても、最初に氏名などを登録した日を「契約の起算日」などと主張。受講者とトラブルになる例があるという。」

特定商取引法の第44条1項6号をご覧下さい。

特定商取引に関する法律

第44条(禁止行為)

「役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。

6 当該特定継続的役務提供等契約の解除に関する事項」 

特定商取引に関する法律とは、消費者トラブルを生じやすい特定の取引を対象にして、そのトラブル防止のルールを定め、不公正なビジネススタイルを取り締まろうとする法律です。

その旧称を、訪問販売等に関する法律といいました。

語学教室やエステティックサロン、結婚相手紹介サービスなどは特定継続的役務提供と呼ばれこの法律の管理下に置かれることになっています。

そもそもそれらの業態に対して特定商取引法が目を光らせる理由は、身体がやせることや、英語が話せるようになることなどの実現は、必ずしも確実ではなく、逆にそこをレバレッジにして利益を生む構造を設計できるビジネスだからです。(私見)

それら不確実な夢にたいして継続的に課金するビジネスでは、お金を払う側にとってみれば、いったい自分がどこで支払った分に応ずる対価を得たのかが確認しがたく、場合によっては結果が得られないのは中途挫折した自分が悪いのだと責めるはめになりがちです。
 
そこでこうした業態に対して、法はその44条で契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、事実と違うことを告げること、契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、故意に事実を告げないこと、さらに契約の締結について勧誘を行う際、または契約の解除を妨げるために、威迫して困惑させることなどを禁止しています。

それらに違反した事業者は、業務停止命令(47条)などの行政処分や罰則の対象となります。

立ち入り検査を受けた英会話学校が業界最大手であることの意味は、潜在的にそれら継続的役務提供ビジネス全般が、そもそも相当数の脱落者予定を利益構造に組み込んで運営されていることを予告しています。

習いに行くというそのこと自体が、あらかじめ自分に不利益な暗示をかけてはいないか、わたしたちにはコマーシャルを消して時々そのあたりを考える時間が必要です。

 

 

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