札束:コントローラの電源

藤田社長爆弾告発、安晋会関連物件も偽装(日刊スポーツ)
「アパは安倍首相の後援会「安晋会」の有力後援者で、同社の広報誌には、自らCMにも登場するアパホテル元谷芙美子社長らと安倍首相がワインをたしなむ写真が掲載されている。そのため、藤田被告は、安倍首相と親しいアパを守るために、自身がスケープゴートされたと思ったようだ。暴露本の出版も明らかにし「耐震偽装事件に結び付けることは真実の歪曲(わいきょく)だ。あなたたちが真実のジャーナリストなら真実を知らしめるべきだ」と訴えた。」

政治資金規正法の第3条1項をご覧下さい。

政治資金規正法

第3条

「第3条 この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。
1.政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
2.特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
3.前2号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその、主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体
イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。」 

政治資金規正法上、後援会など政治団体は3条1項にて規定されています。

普通後援会には企業の会員も多く所属、いや主力メンバーとして所属するわけですが、かつて最高裁は企業献金に関して昭和45年6月24日、八幡製鉄事件という非常に注目を集めた判例を出しています。

それは現在の新日鐵自民党政治献金したことをうけ、株主が会社の目的外の行為であると会社に代位し、献金金額の返金を代表取締役に求めた訴訟でした。

そこで最高裁大法廷は、「憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によってそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあったとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。」としています。(引用:憲法判例百選〈1〉 有斐閣

つまり会社がどこに政治献金しようが、常識範囲内なら株主は企業政治献金を定款の目的外だとして文句は言えないのだと結論づけているのです。

そして学説上の通説によれば、なぜ法技術上の人格である法人などに、人権という人間にとっても大切な権利がが認められるのかは、その納税実績など、ひとえに現実としての社会的実体性に求められるのだということになっています。

しかし法学問上は、必ずしも八幡製鉄事件における判例理論は諸手をあげては歓迎されていないようです。

つまり、そもそも厳密にいって投票権や参政権等周辺諸権利を、自然人である国民のもとから仮想人格にすぎない法人へ拡張解釈していってよいものかという憂慮です。

もし資力が個人とは比べものにならない会社やそのグループの献金がアンコントローラブルに認められ続けるのなら、その巨額の政治献金がわたしやあなたの明日を押しつぶす可能性が孕まれているといえます。

事実、政治資金規正法献金を「政治活動に関する寄附」と呼び、会社等の団体は,政党・政治資金団体及び資金管理団体以外の者に対しては,政治献金をしてはならないとするなど,法人の政治献金が圧倒的に世界をコントロールしてしまう日を警戒しています。

確認検査会社の社長の主張のひとつは、「首相の後援会有力会社が疑義にかかわったためそのスキャンダルが黙殺された」というものです。

もしその言の通りなのだとすれば、それは会社という巨人のもたらす巨額の政治献金が、入居者という個人達をいよいよ圧殺したという図をキャプチャーしたことになります。

それはまさに政治資金規正法の憂慮した事態の現実化を意味しています。

その世界とは、企業という巨人がいかに巨大なのかが、その足に踏まれるまで(たとえば部屋を購入するまで)わからない、目隠しの世界のことです。