経営に失敗して自治体は遠隔操作を申し出た

北海道夕張市、財政再建団体申請へ…負債600億円超(読売新聞)

「北海道夕張市後藤健二市長は20日開会した市議会で、財政再建団体の指定を国に申請する方針を表明した。実質負債は600億円超で、1年間の標準財政規模(約45億円)の10倍以上。今年中に指定されれば、1992年の福岡県旧赤池町(現福智町)以来14年ぶりで、財政運営は事実上、国の管理下に置かれる。夕張市は、最盛期24か所あった炭鉱で栄えたが、90年に最後の炭鉱が閉山し、約12万人に上った人口も約1万3600人に激減。市は観光振興を打ち出したが、失敗した。」

地方財政再建促進特別措置法の22条2項をご覧下さい。

第22条

「2  昭和三十年度以降の年度において、歳入が歳出に不足するため翌年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ、若しくは当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体で、既に財政再建団体となっているもの以外のものは、当分の間、第二条第一項の規定により財政の再建を行うことを申し出ることができる。(以下略)」

わたしたちの暮らす国では、自治体に倒産制度は認められていません。

そのかわりに自治体が財政危機に陥ると、地方財政再建促進特別措置法により財政再建団体制度が設けられています。

財政再建団体制度とは、もともと昭和29年、財政危機に直面した多数の自治体を救済することを目的に考案されました。

朝鮮戦争後の不況下で、学校の六三制移行や自治体警察の整備等が多数の自治体を深刻な財政危機に陥れ、国はこれに対応するため地方財政再建促進特別措置法による財政再建団体制度を設立したのです。

それは自治体から提出させる財政再建計画と引き替えに財政再建債の発行を認め、事実上自治体が赤字を繰り延べることを許すものでした。

当時、赤字団体2881団体のうち、実に588団体がその適用を受けたといいます。

しかし地方財政再建促進特別措置法の運用は立法当時のイメージを超え、昭和30年度以降に実質収支が赤字に陥った団体でも22条2項により準用することを許されています。

準用するため昭和30年度以降の赤字団体のことを、準用再建団体と呼んでいます。

準用再建では地方債の発行制限が緩和され、一時借入金への政府資金の融資が斡旋されます。

また退職手当債の発行が許可される他、一時借入金の利子や退職手当の一部の特別地方交付税への算入なども許され、国がその財政を援助する措置が用意されています。

(参照:財政再建団体 何を得て、何を失うか 橋本行史 公人の友社)

この制度は形式的には、財政再建計画をもとに歳出を抑制させて自治体に自主的に財政再建を行わせるシステムです。

但しその手続を大人が実質的に眺むれば、自治体が意思の主導権を国家や県に預けることに他なりません。

地方自治はわたしやあなたが自分の気持ちを社会の形に直接反映させることが可能な直接自治を行使できる数少ないチャンスです。

しかし財政再建団体の申請は、地方自治を生き永らえさせるためにその本質を殺す選択でもあります。

市長の椅子に座らせるべきは選対のプロではなく、まず第一に経営のプロであるべきである。

自治体の危機のニュースはわたしたちに改めてそのことを示唆してくれています。



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