100億円が今夜もオレンジ色に輝く

東京タワー、借金100億円のカタ 元社長が事業に失敗(朝日新聞)
「残った債務は123億円。日本電波塔は99年12月に福三郎氏を社長から解任。00年、東京タワーの敷地と建物を担保に銀行から100億円を借り入れ、自己資金の23億円を加えて全額肩代わりした。登記簿には今も100億円を限度額とする根抵当権が設定されているが、同社によると、すでに53億円は返済したという。」

民法の398条の2をご覧下さい。

第398条の2〔根抵当権の意義と被担保債権〕

「1 抵当権は設定行為を以て定むる所に依り一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度に於て担保する為めにも之を設定することを得(以下略)」 

日本がまだ田んぼとあぜ道だらけだった時代、街にビルを建てるためや農家が新しい田畑を購入するため土地の上に抵当権が設定されてきました。

抵当権は初期において、もっぱら静的ににお金を作るために用いられたのです。

しかし経済が発達しはじめるとあらゆる企業が動的に(常時)大量の資金を必要とするようになり、そのことはわずかなお金を増やそうとしている人にとっても”それは大きなビジネスチャンスである”と解釈されるようになりました。

すると抵当権という方法論は、大量の投資を仲介する役割を負いはじめました。

つまり抵当権というものは歴史上、所有権者が金銭借入するための制度という意味づけから、徐々に資本家の金銭投資のための制度という意味づけに重心を移してきたというわけです。

そしてその新しい目的下においては、抵当権にとって投資者の権利が容易に譲渡し得るものであることは最大課題になりました。

しかも、その流通性を確保するためには、原初、借入側に軸足を置いていた時代とは、構成を変えたシステムにしなければならないことになります。

抵当権変質の歴史は、「流通性」導入の歴史であったとも言い換えられ、そしてその導入した流通性こそが抵当権そのものを大幅に進歩させたといえます。

抵当権に高度の流通性を要求した経済の発達は、結果的に不動産を債権化することに拍車をかけてきたのです。(参照:近代法における債権の優越的地位 我妻栄

さて、民法の398条の2が定める根抵当とは、限度額を定めておいて、将来確定する債権をその範囲内で担保する、抵当の巨大などんぶりのことです。

あの都心の夜をオレンジに飾る東京タワーも、現在100億円の根抵当が設定されているのだとか。

高度に発達した抵当権制度は、東京タワーにお金を貸している人に確実な換価性を保証しています。

通りがかる人にはただ優美な姿だけを見せていますが、ことビジネスマン達に対しては、一枚の大きな紙幣としての姿を見せているということも、また高度経済社会の真実です。




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