芽を吹かせるためだと、如雨露はその口を大きく広げた

格安DVDの販売差し止めを申請 米映画会社(朝日新聞)
文化庁著作権課は、04年1月1日に施行された改正著作権法によって、03年末まで保護期間があった映画は、保護期間がさらに20年間延長されたとの解釈をとる。「03年12月31日午後12時と改正法が施行された04年1月1日午前0時が接着しているため、改正法が適用される」という説明だ。しかし、「53年に公開された作品は、03年末で保護期間がいったん終了して、パブリックドメイン(共有財産)になった」と判断、廉価版などの販売をする事業者もいる。」

著作権法の第54条第1項をご覧ください。

第54条

「1 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年を経過するまでの間、存続する。(以下略)」

すごいアイディアや美しいメロディが生まれたら、それを生んだ人の権利を法律で守らなければならない、そこまではわたしたちはすぐわかります。

ではいったい、その権利は何年ほど保護すれば妥当だといえるでしょうか。

本質的には、そのアイディアのために投資した金額や時間に比例して保護年数を上げればよいというものでもありません。

なぜならそれでは著作権は大きな資本をもつ法人ばかりが所有することになり、手段を持たない才能あふれる人が世に出る機会は失われてしまうからです。

結局のところ、わたしたちが著作権のようなアイディアを保護する法律を整備することで待つものは、わたしたちに新しい世界観をもたらしてくれる新しい才能の可能な限りの成長なのかもしれません。

彼が芽を懸命に吹かそうと動機づけるためには、事前に育成に十分な法的環境が用意されていなければなりませんし、それが社会の機構や意識に十分貢献したならば(しなくとも)、彼の死後も作品のもたらす果実を彼の家に届けるという敬意も整備されている必要があります。

映画の場合、そのための期間は50年はなく70年なのだと、2004年に著作権法が改正されたところです。

映画著作物とは、映画フィルムに固定された劇場用映画及びビデオテープ・ビデオディスク等の固定物を問わず、視覚的又は視聴覚的に映画類似の効果を生じさせる著作物のことをいいます。

ただしあなたもご存知のとおり映画製作には多数の人が関わりますが、そのすべてが映画著作権者ということになると混乱が起こり流通を阻害することは間違いありません。

このため著作権法の16条は映画著作物の著作者を監督、プロデューサー、撮影監督、美術監督など映画の全体的形成に創作的に寄与した人だけに限定しています。

また第29条の1項は、監督等の著作者が映画製作者と製作参加契約を締結しているときには、映画著作物の著作権が映画製作者に帰属するとしています。(参照:有斐閣 法律学小辞典

すなわち映画著作物の場合、監督やプロデューサーなど実質的な作品の母親に法が直接対価を保障しなくとも、映画制作会社から間接的に対価が支払われることになっているわけで、その製作会社の著作権を保護するのもまた、間接的に著作権者を育成する環境を整えることにはなります。

ただし著作権法はれっきとした国内法ですので、その再構築も国民主権原理が支配していなければなりません。

一方で十分保護の終わった名作に、こどもたちがおこづかい程度で接することができるというのも国民にとって大きな利益であり、それを考慮する必要がないのなら著作権は永久に保証すればよいだけなのです。

店頭にローマの休日が500円で並ぶ現実と、対する製作会社の要求とのバランスは、まず第一にわたしやあなたが考える問題ではあり、その前段階で外圧が自由に書き換えていくはずではありません。




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