霊媒師は全権を委託される

Winny通信の遮断は「通信の秘密」を侵害--総務省判断をぷららが受け入れ(ITpro)
総務省は「ぷららの措置は、電気通信事業法で定めた通信の秘密を侵すと考えられる」(総合通信基盤局消費者行政課)と判断した。通信の秘密を侵すとしても、通信や郵便事業などの「正当な業務」とみなされれば違法性はなくなる。しかし、総務省はこの点についても、「正当な業務として認められない」(同)と判断した。 」

刑法の第35条をご覧下さい。

第35条(正当行為)

「法令又は正当な業務による行為は,罰しない。」 

刑法はその35条で「正当な業務」による行為なら外見上法に触れていても処罰しないことを断言しています。

正当な業務による行為とは、社会生活上正当なものと認められる業務行為のことで、お医者さんが他人のお腹を刃物でカッさばいても、刑法第35条がこれを処罰しません。

ただし処罰されない正当業務行為というためには、それを社会が全うだと許容する内容の行為でなければなりません。

最高裁判例も、弁護士や取材記者の行為の正当業務行為にあたるかについて、「その手段・方法が法秩序全体の見地に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである」ことを要するとしています。

また新聞記者の取材活動について,新聞記者が外務省女性事務官と肉体関係をもち沖縄返還交渉に関係する書類を持ち出させた事件では以下のような判断を下しています。

「その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは,実質的に違法性を欠き正当な業務行為というべきである。……被告人はもはや取材の必要がなくな〔った〕……後は,同女に対する態度を急変し……,加えて……その写を国会議員に交付している……〔。〕……このような被告人の取材行為は,その手段・方法において法秩序全体の精神に照らし社会観念上,到底是認することのできない不相当なものであるから,正当な取材活動の範囲を逸脱している……。」(外務省機密漏えい事件 最高裁昭和53年5月31日 第一小法廷決定)[出典:刑法判例百選1 総論 有斐閣] 

もともとメディアの語源は、霊媒師、メディウムです。

主役は神や霊魂(発信者)と、それを受け取る人(受信者)であり、メディウム自体は本来脇役のはずです。

しかしその代役の効かない存在のため、メディウムは古来から特別な玉座を与えられてきています。

インターネットの経路を提供するプロバイダも、それがなければ私たちは通信を互いに発信・享受することができない重要なメディアです。

それはTVやラジオなど一方向を霊媒するメディウムよりも、場合によってはさらに重要な意味を持つ双方向の霊媒という仕事をします。

プロバイダはその気になればどのようなメールがやりとりされているのかも盗み見ることもあっさりできますが、それをやらない約束(通信の秘密)が霊媒師を霊媒師たらんとする重要な要素になります。

より多くの情報を霊媒しようと神の胸ぐらを掴んだり、霊媒師の機嫌次第で神の言葉を遮断したりすることはも、はや媒体としての「正当な業務」の範囲を逸脱しています。

そしてあまりに大量の情報を処理する業務ゆえ、プロバイダは業務に正当、不当があることなどに思いが及びにくくなることもまた事実です。

 

 

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