投網を打つと無許可共済という小槌がかかった

<レオパレス21>社長が入居者共済金を私的流用(毎日新聞)
「アパート賃貸のレオパレス21(東京都中野区)は16日、入居者から共済金名目で集めた資金約48億6500万円を深山祐助社長が不動産取得などに私的流用していたと発表した。同社は社長辞任など経営責任を含めた社内処分を検討している。同社は01年ごろ「入居者共済会」の設立準備を始め、01年1月~04年3月に、入居者から共済金として84億円を集めた。深山社長の指示で、会社の経理とは別に管理していた。深山社長はこのうち、不動産取得に計17億円を自ら借り入れたほか、知人に2億円を貸し、別の知人が経営する会社に29億6500万円を貸し付けた。知人への2億円の貸し付け以外はすべて返済されたという。同社の共済会は、無認可共済制度が社会問題化したために設立を断念。今年2月に共済会の口座を調査したところ、社長の私的流用が分かった。」

保険業法の第3条をご覧下さい。

第116条(責任準備金)

「保険会社は、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てなければならない。(以下略)」

共済とは、不特定の人を相手に保険金を支払う保険業とは異なり、特定範囲で団体を構成してお金の固まりを作り、メンバー各自に起こりうるリスクにそなえようとする制度をいいます。

しかしこれまで共済には法律的な監督を受けるいわゆる許可共済と、法律的な根拠のない無許可共済というものが存在していました。

認可共済は保険業法2条1項にいう「他の法律に特別の規定のあるもの」にあたるため個別の法律がこれを管理していました。

対して無認可共済のほうも同じく大きなお金の固まりをつくるにもかかわらず、これまで法的な管理が及んでいませんでした。

たとえば保険業法は116条で保険金の支払い等に備え、保険会社自身に責任準備金の積立を要求しています。

しかし無認可共済にはこれを強制することができず、したがって経営破綻、あるいは計画倒産した場合には、加入者は現在のところただ我が身の不運を泣くしか術がありません。

このため先般、保険業法が改正され「少額短期保険業」制度が導入されました。

少額短期保険業とは、保険業法上の保険業のうち、一定事業規模の範囲内において、少額かつ短期の保険の引受けのみを行う事業のことです。

改正以降、無許可共済は「特定保険業者」と定義され、改正保険業法第3条により、特定保険業者は、平成18年9月30日までに財務局に特定保険業者の届出を行うことを要求されています。

さらに無許可共済団体は、平成20年3月までに「少額短期保険業」の登録等の対応を行うか、株式会社等を設立して保険会社として免許を受けなければなりません。

つまり平成20年3月までは共済業界は法的管理の移行期にあり、保険業法の改正がなされたとはいえ、無許可共済への加入者はいまだ法的には決して安全な状態にあるとは言えないので注意が必要です。

無許可共済の設立はこれまで一部では「イザというときのために」という人間心理を利用したブラックビジネスとして有名な手段であったとさえいいます。(もちろん良心的な無許可共済も多かったはずです)

法の投網は打たれました。

問題なのは網で捕らえきれない新しい岩陰を銛で突いてみると、そこにはいつも名前の通った企業がいたりする現象は、わたしたちの中の何が許しているのかという点です。


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