すごろくのアガリは全て地獄

堀江被告、祝杯あげ「生き急ぎすぎたかな」(産経新聞)
「起訴事実については否認を貫いているが、保釈直前には自身の半生を振り返り「少し生き急ぎすぎたかな」と話したという。華やかな生活も事件で一転した。保釈中はライブドア関係者との接触が一切禁止されている。携帯電話も新調する予定で、一連の事件では重要証拠となった電子メールの使用も控えるという。「ライブドアの経営にかかわるつもりはない」。そうも宣言している。」

刑事訴訟法の第60条2項をご覧下さい。

「第60条〔勾留〕

2 勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、1箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第89条第1号〔死刑、無期、短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したものであるとき〕、第3号〔常習として長期3年以上の懲役・禁錮にあたる罪を犯したものであるとき〕、第4号〔罪証隠滅の疑いに相当な理由があるとき〕又は第6号〔氏名または住所が判らないとき〕にあたる場合を除いては、更新は、1回に限るものとする。(以下略)」 

勾留とは犯罪を犯したとして訴追されている人や、すくなくともその疑いをもたれている人を拘禁する刑事手続上の強制処分のことであり、それはいまだ刑罰ではありません。

その目的は証拠に不当な影響を及ぼさないように訴追されている人やその仲間を証拠から遠ざけることを第一にしています。

勾留が許されるのは、訴追されている人や疑われている人が罪を犯したと疑える十分な理由があり、かつ証拠の隠滅など刑事訴訟法60条1項のおそれがあるときだけです。

訴追された人、すなわち堀江さんのような被告人の勾留期間は 2カ月で、特に必要があれば 1カ月ごとに更新できます。

しかし罪証隠滅等の特別の理由がなければ更新は 1回しかできません。

それが国家が刑事訴訟法の60条2項でなしている約束です。

その条文は直接的には人身の自由を保障した憲法34条の精神を具現化しており、また間接的には自在に勾留が引き伸ばされ、検察の手練手管や拘禁症候群により被告人が考えてもいなかった犯罪の故意を吐露してしまうことを警戒しています。(私見)

そして一旦検察官、特に特捜の検察官の前で不本意でも”自白”してしまえば、それは検面調書と呼ばれ、裁判所は伝聞証拠排除の法則の例外として証拠能力を肯定してしまいます。

昨年、外交官の佐藤優さんが書いた「国家の罠」という書籍に、国策捜査に関する考察とそれに対する特捜の返答が興味深く記録されています。

『要するに一旦、国策捜査のターゲットになり、検察に「蟻地獄」を掘られたら、そこに落ちた蟻は助からないのである。だからこのゲームは「あがり」は全て地獄の双六なのである。このような「体験的国策捜査観」を私は率直に西村検事にぶつけてみた。
「君の言う、『あがり』は全て地獄の双六という表現は、とってもいいし、正しいと思うよ。ただし、いつも言っていることだけど、僕たち(特捜部) は、冤罪はやらないよ。ハードルを下げて、引っかけるんだ。もっとも捕まる方からすると理不尽だと思うだろうけどね」』(出典:国家の罠 佐藤優 外務省のラスプーチンと呼ばれて 日経BP企画

長期勾留という装置の絶大な効果は、検察も裁判所も互いに十分理解しています。

それゆえに検察側は保釈の執行停止を申し立てをなし、これに対して東京地裁は検察の準抗告を棄却した面もあるのだともいえそうです。

 

 

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