嗜癖というターボチャージャーが唸りを上げる

ギャンブル性が高すぎて客が半減したパチンコ30兆円の行方(朝日新聞 be report)
社会経済生産性本部の「レジャー白書」によると、90年代前半に3000万人のパチンコの「参加人口」は04年度には1790万人と、半分近くに減った(表(1))。 この間にパチンコ・パチスロは、当たる時には何十万円分も出るような射幸性が高い機械がもてはやされ、短時間に何万円も使ってしまう遊びになった。客が減ってもホールの売上高が年間30兆円前後を維持してきたのは、射幸性を高め1人当たりの売上高を増やしてきた結果だ。 」

風適法施行規則の7条第1項表をご覧下さい。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則

第七条(著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準)

「法第四条第四項 の国家公安委員会規則で定める基準は、次の表の上欄に掲げる遊技機の種類の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるとおりとする。

ぱちんこ遊技機

一 一分間に四百円の遊技料金に相当する数を超える数の遊技球を発射させることができる性能を有する遊技機であること。

二 一個の遊技球を入賞させることにより獲得することができる遊技球の数が十五個を超えることがある性能を有する遊技機であること。

三 一時間にわたり遊技球を連続して発射させた場合において獲得することができる遊技球の数が発射させた遊技球の数の三倍を超えることがある性能を有する遊技機であること、その他短時間に著しく多くの遊技球を獲得することができる性能を有する遊技機であること。(以下略)」 

風適法施行規則は風営法及び風適法の規定に基づき、並びに同法を実施するため定められた細かな決まりです。

パチンコ屋さん、いわゆる風俗営業を行おうとするときには風俗営業許可というものを、都道府県の公安委員会から受けなければなりません。

パチンコ屋さん開業の場合、風営法の他に風適法が以下のような決まりを守ることを要求されます。

それは許可証を掲示する義務があること、営業時間が規制されること、必要以上に薄暗くしてはならないこと、著しく射幸心をあおる広告をしないこと、騒音を基準以下におさえること、料金をはっきりと明示すること、 18歳以下の子供を立ち入らせないこと等々です(まだまだたくさんあります)。

さらにパチンコ台そのものに対しても、施行規則7条1項の表で厳しい基準が設けられており、これに違反した人は風適法49条3項1号で6月以下の懲役又は 50万円以下の罰金、併科となります。

法がこれほどにパチンコ産業への厳しい枠組みを決めているのは、そのビジネスモデルが射幸心を煽るところにあるからです(私的解釈)。

しかし一時の憂さ晴らしに射幸心を煽られてみるならば、それもひとつの遊興と割り切れますが、ひとたび歓迎されざる無意識要因と結びついてしまえば、それは嗜癖と呼ばれることになります。

嗜癖とは一定対象をクセにしてしまう心の機能のことで、たとえばお酒やタバコ、薬、カフェインそしてギャンブルなどがその対象になりやすいものです。

射幸心とは文字通り幸福を射止めようとする心理であり、だとすれば「自らの力ではそのような大きな幸福を手にすることはできない」という自分への負の刷り込みが強いほど、ギャンブルというチラチラ光る的へ射る矢の数はめっぽう多くなるはずです。

法がやたらとギャンブル性の高い遊技台を禁止したり、音のボリュームや派手な広告まで一定程度に規制しているのは、その立法以前にギャンブルという魅力的な的が、強い負の刷り込みを持つ人の心と異常に強く繋がってしまうことで起こった社会的悲劇を多く学習してきたからです。

一旦その関係が成立してしまえば、ギャンブルを生活を破壊しない常識内の遊興額に納められるか、家で待つ子供のために常識範囲内の時間で切り上げられるかは、もはやその人の常識を責めることはできないアディクションのレベルになってしまいます。

ケータイメーカーがマナー問題を訴え、タバコメーカーが環境問題を訴え、パチンコの業界団体が依存に関わる社会問題の解決に本腰を入れだしたのは、ビジネスを加速させる強烈な過吸気システムである人間の「嗜癖」が、そのビジネスモデルの内燃機関自体に強い負担を強いはじめてきたからにほかなりません。