執事喫茶の予言する直裁的な未来

メード喫茶ならぬ「執事喫茶」が登場(朝日新聞)
「お嬢様、お帰りなさいませ」。メード喫茶ならぬ「執事喫茶」が東京・池袋に先月末に開店し、若い女性に人気だ。原則予約制だが、数日先まで予約でいっぱい。赤いじゅうたんにシャンデリア。「お屋敷」と呼ばれる店内で、客は「お嬢様」として「執事」役から軽食を振る舞われる。時間は80分で「お出かけの時間です」が退店の合図。 一人のOLの思いつきがきっかけ。「メード喫茶の逆バージョンがあっていいのに」。ブログで呼びかけると大反響。4カ月で開店にこぎつけた。あまりの人気に執事役が不足し、「60歳以上大歓迎」とシルバー人材を急募している。 」

個人情報保護法の16条1項をご覧下さい。

第16条(利用目的による制限)

個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。」

マーケティングとは現在非常に広い意味を持って使われている言葉ですが、個人的には”事業が回転するしくみの構築、その全て”をいうのだと理解しています。

そしてマーケティングの第一段階として絶対にはずせないのが、「自分の始めようとしているビジネスにどれだけの興味を持つ顧客が見込まれるのか、あるいは作り出し得るのか」という事前調査です。

自分の持つルアー(新サービス、新商品)に興味を持つ魚のいない川では、いかに高価な竿をたれようとも釣果は期待できないからです。

これまでは市場調査会社は個人情報を自由に転用、売買していました。

しかし一旦採取されたそれらの情報が無分別に二次利用、三次利用されたり、あるいは緊張のない管理体制下でデータが漏洩し思わぬ業態の会社からダイレクトメールが届いたりする事態は決して望ましい社会とはいえませんでした。

あらゆる情報が電子化された今、個人情報の組み合わせは、第三者がわたしやあなたに有無をいわさずアクセスするための命令構文のサブセットとして体を為しつつあります。

そこで個人情報の意義を現代において再定義した国家は、2003年5月30日に個人情報保護法を用意、ある程度大きな規模の個人情報を扱う事業者に、その不正な取得の禁止や、同意のない第三者への提供の禁止などを義務づけました。

新法の前に、現在では個人情報と聞けばあらゆる企業がセンシティブな対応をせんと努力しているところです。

法16条は事前に明示した情報採取目的以外の流用を禁じ、懸賞などを装って個人情報をマーケティングに二次利用、三次利用することを抑圧しています。

これにより新規事業や新商品を投入する際にも、市場の興味を調査することは以前ほどだらしない態度ではできなくなりました。

しかしそれは最低レベルに帳尻を合わせたというだけのことであり、その法律をわたしたちが法の趣旨どおりに運営できるものなのか、それはあと数年推移を見守ればはっきりしてくるでしょう。

執事喫茶なる新しいアイディアがその有用性をブログの世界で一人の女性会社員から問いかけられ、熱い共感の声が集まった結果その立ち上げにすばやい速度で成功しています。

それは新規事業案が発表されたブログのコメント欄に、思わぬ形で潜在市場の調査結果が報告されたのと同義であり、個人情報保護法の案ずる危険因子を通過せずとも、市場の嗜好は素早く現実化しうるという幸福な予言でもありそうです。

だれもが自分の情報を駄々漏れさせられる可能性のあるインターネット社会は、同時に誰もが自分の要求を直接起業家予備軍に伝えることができる機能もそなえているのだと表現しはじめています。