I See A Red Door And I Want It Painted Black

中国が公演で披露の曲「検閲」と、ミック・ジャガー(CNN)
「中国・上海で8日に公演する英人気ロックバンド、ローリング・ストーンズのボーカル、ミック・ジャガーさんは7日の記者会見で、中国当局から持ち歌のうち、「5曲を歌わないように」との検閲を受けた事実を明らかにした。 同バンドによる中国本土でのコンサートは初めて。 曲名などには具体的には触れなかったが、「セックス」を前面に出した曲風が禁止要因とみられる。ジャガーさんは、「予想はしていた。検閲を受けずに中国に来られるとは考えていなかった」と指摘。 」

旧出版法の3条をご覧下さい。

第3条

「文書図画を出版するときは、発行の日より到達すべき日数を除き3日前に製本2部を添え内務省に届出べし」 

検閲とは、国家が国内における表現行為を調査し、場合によってはそれを変形・禁止して、国内の思想を恣意的な方向に誘導する手法です(私的定義)。

ストーンズが演奏する以前にその歌詞にクレームをつけるようなことは事前検閲と分類され、思想発達の根をハナから折ってしまう国家管理行為です。

国家がわたしやあなたの代理人であるはずの日本では、検閲は手段と目的が入れ替わってしまうことを意味しますので、日本国憲法 21条2項は、一切の検閲を禁じています。

欧州における禁書目録の歴史など、検閲は古くから市民が自生的にその思想を自由に発達させることを恐れる権力側に用いられてきました。

市民が主体性を存在の根源から希求した、フランス革命アメリカ独立革命など各市民革命では、検閲の撤廃が叫ばれその結果各新憲法に検閲の禁止がうたわれました。

わたしやあなたの国でもひとごとではなく、明治時代の出版法は出版に際してあらかじめ内容を内務省に届け出ることを要求していました。

1949年に出版法は廃止されたとはいえ、国家による検閲類似の行為がわたしやあなたの国でも完全に廃止されているとは断言し難く、現実的にはたとえば教科書作成の現場等でミディアム・コントロールを受けているといわざるをえないでしょう。

(学説上は教科書検定は、”書籍として発売することは自由であり、検閲には当たらない”と考える立場が通説的です。)

赤いドアの国、中国でミックジャガーは予想していた検閲の洗礼を受けました。

しかし自由の国を自称するアメリカでさえ、つい先般テロ対策と称して国内の通信内容を令状なしで盗聴していたことが暴露されたばかりです。

ひょっとすると実質的な検閲というものが完全に存在しない国家とは、努力目標としての単なるファンタジーなのかもしれません。

しかしながら少なくとも、検閲がその国でどの程度あからさまに行われているのかは、民度成熟を図るバロメータとしては機能するはずです(私見)。