教授が辟易し官吏がふためいた

坂本龍一PSE“激怒”会見(スポーツニッポン)
「坂本は静かな口調だが、厳しい言葉を選びながら訴えた。「自分の使うものを役所に決められたくない。ビンテージ楽器だけ除外すれば、口うるさいわれわれミュージシャンが黙るだろうという意図がみえみえだ。リサイクル業者たちが運動すれば応援したい」。希少価値の高い「ビンテージ」の電気楽器だけ適用除外に指定し、問題の幕引きを図ろうとする経産省の姿勢を厳しく批判した。またビンテージ楽器についても「何がビンテージかは役所が決めることではない」と強調した。」

電安法の第9条をご覧下さい。

電気用品安全法

第9条(特定電気用品の適合性検査)

「届出事業者は、その製造又は輸入に係る前条第一項の電気用品が特定電気用品である場合には、当該特定電気用品を販売する時までに、次の各号のいずれかに掲げるものについて、経済産業大臣の登録を受けた者の次項の規定による検査を受け、かつ、同項の証明書の交付を受け、これを保存しなければならない。(以下略)」 

PSE法(Product Safety、Electrical Appliance & Materials)、すなわち電気用品安全法とは、電気用品による危険及び障害の発生を防止することが目的の法律です。

以前はこれを電気用品取締法と呼びましたが、改正により国の事前規制が廃止され、民間機関が基準認証をする第三者認証制度が導入されました。

電安法では、特に危険又は障害の発生するおそれが多いもので、政令で定めるものを、特定電気用品と定義します(2条2項)。

そして特定電気用品は、製造・輸入事業者の自主検査に加え、技術基準に適合していることを確認する適合性検査を義務づけています。

その適合性検査をするのが、9条にいう登録検査機関です。

国内の登録検査機関は、現在6機関あります。

財団法人電気安全環境研究所、財団法人日本品質保証機構、社団法人電線総合技術センター、テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社、株式会社コスモス・コーポレイション、株式会社ユーエルエーペックスです。
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kensakikan/kensakikan_list.htm

しんぶん赤旗によれば、このうち株式会社の三者を除く二財団法人、一社団法人に全てに経済産業省からの天下りが確認できているようです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-02-26/2006022601_01_0.html

株式会社以外というところがミソです。

同紙によれば、電気安全環境研究所には、役員十六人中五人が天下り、理事長などの要職を占めて年二千万円前後の報酬を得、日本品質保証機構では役員十七人中七人が経済産業省などからの天下り、理事長、副理事長、専務理事の高額報酬を得るポストを独占、社団法人電線総合技術センターでは、常勤役員の専務理事に天下り、同センターの役員報酬支給規定、役員退任慰労金支給規定が適用されるのは現在、この天下り役員一人だけなのだとか。

どうやら教授の杞憂をよそに、官僚は何がビンテージなのかを決めたい、あるいは少なくとも決める場所には長く所属していたいようです。

芸術家の感性を甘く見た内閣提出法案(それはとりもなおさず官僚による立案を意味しますが)は、思わぬ突き上げにより、立法の真意、「書かれざる第1条」を炙り出されようとしています。