海外賭博サイトにJRAコーナー、購入試算300億円(Yahoo)
「日本からの賭博サイト利用は賭博罪などに抵触するが、サイト運営会社が利用者情報を伏せているため、客の特定は極めて困難で摘発例もまれ。JRAは「国際競馬統轄(とうかつ)機関連盟」(本部・フランス)を通じ、サイト開設国に取り締まりを要請するなど、思わぬ“商売敵”に危機感を募らせている。」
刑法第1条1項をご覧下さい。
第1条 「この法律は,日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」 |
競馬法1条6項、「日本中央競馬会、都道府県又は指定市町村以外の者は、勝馬投票券その他これに類似するものを発売して、競馬を行つてはならない。」に違反すると、本来同法30条により「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処」せられるはずです。
また刑法185条賭博罪は、「賭博をした者は,50万円以下の罰金又は科料に処する。」と定めます。
ところが、まず刑法の第一条がその適用範囲を自国の領域内にとどめることを宣言しており、これを属地主義と呼びます。
一定の行為や事実について国内法を制定し、さらに、その適用や執行をはかる国家の権能のことを管轄権といいますが、国際法は国家の管轄権行使を無制限には当然ながら認めていません。
たとえば同じ団地にすむ田中さん家では「夕飯の時TVを見たらゲンコツだぞ」というお父さんのルールがあったとしても、隣の山田さん家の奥さんが TVを見ながら夕飯を食べたからといって田中さんのご主人にゲンコツを食らわされてはたまらないからです。
しかし隣の山田さん家のチビッコが、田中さん家に遊びに来て悪戯の限りを尽くしたときは田中さんは遠慮無く鉄槌を下すことが許されるでしょう。
このように属地主義は刑法や税法のような公法規定の適用範囲をお隣さんの存在を前提に、団地の部屋ごとに区切るように場所的な要素で定めようという有る意味でフェアな原則で、日本ばかりでなく国際的にこれが採用されています。
そしてその理由は国家主権の発動がその領域内に限定されるとする国際法上の領土主権の考え方が基礎にあるからにほかなりません。(参照:法律学小辞典 有斐閣)
もともと英国のブックメーカー(政府公認の賭元)は以前から日本のニュースなどを含めてなんでも賭の対象としてきています。
しかしインターネットを介して海外の業者が日本人の競馬ファンの掛け金を持って行ってしまうとなると、これまで逃した魚、そしてこれからも逃すだろう魚の数がハンパでないだけに関係者は笑って見ていられなくなります。
ところが、原則として地球という団地全体の秩序を形成しようとする属地主義がその前に立ちふさがってしまい、日本の捜査権はやたらとあっちこっちに及ぼすことはできないのです。
個別家庭のルールをインターネットが軽々と飛び越えてしまう時代の前に、田中さん家のお父さんが決めたルールというひとつのノードによる解決方法は内包する限界性を見せ始めています。
団地全体の秩序のために自治会運営、つまり国家の個別意思の有機的連結をどう形成していくかというネットワーク的解決方法が要求されているニュースだとも言い換えられそうです(私見)。
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