累犯:人という不完全ないきもの

「刑法甘い」遺族の叫び ストッキさん 厳罰化求め署名活動(大分合同新聞社)
宮崎地裁は、今年六月三十日、男がストッキさん方に侵入し、現金約五十五万円などを盗んで放火、寝ていた妻公子さん(46)と中学一年の二女友理恵さん(12)=いずれも当時=を焼死させた―などとして、起訴された殺人、放火、常習累犯窃盗など九つの罪について無期懲役の判決を言い渡した。判決は「仕事や借金のうっぷんを晴らすためという放火の動機は自己中心的。二人の死者が出た後も放火事件を起こすなど常習性が顕著」と指摘した。刑は確定し、男は服役している。ストッキさんは「無期懲役なら十数年で仮出所できる。殺人犯に対して日本の刑法は甘い」と訴え、「終身刑」や再犯防止対策の制度新設などを求めている。」

刑法の28条をご覧下さい。

第28条(仮出獄

「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは,有期刑についてはその刑期の3分の1を,無期刑については10年を経過した後,行政官庁の処分によって仮に出獄を許すことができる。」

無期懲役に処せられた人は、一生刑務所にいなければならないわけではありません。

たとえ無期懲役であろうとも、刑法28条が仮出獄の余地を与えています。

仮出獄地方更生保護委員会が犯罪者予防厚生法30条にのっとり、本人の人格、在監在院中の行状、職業の知識、入監入院前の生活方法、家族関係その他の関係事項を調査した上で決定します。

つまりどのような重罪で無期懲役と判じられようと、最短で10年たてば仮出獄検討の機会が与えられることになっているのが現状の刑法です。

ストッキ・アルベルトさん方を襲った者が問われた罪は現住建造物等放火罪、殺人罪、現住建造物等放火未遂罪、非現住建造物等放火罪、常習累犯窃盗罪等九つの罪に渡り、奥さんとまだ幼なかったお嬢さんは生きながら焼かれています。

助けられなかったことがあまりにも無念だったストッキ・アルベルトさんは、終身刑ではない無期懲役刑というものを疑問視し、現在もオートバイで全国を行脚しながら署名活動をされているそうです。

一方で終身刑に反対する立場の人達がもっとも問題にするのが、終身刑の残虐性で、それは具体的には重罪の累犯者などに対しては堀の中で死ねと言い切ってしまう態度の事を指します。

現在のところ両理念の対立を収束させるためには、仮出獄を審査する地方更生保護委員会の仕事をより完璧に近づけるしか方法がありませんが、それが人の仕事である以上常に失敗の可能性を孕み続けます。

累犯者自身がわからない理由により、一旦示したはずの「改悛の状」をひるがえらせてしまう点にも、未だ人間が仕組みを解消しきれていない心の問題を見ることができます。

なにより「委員会の仕事の誤差範囲内」と呼ぶには、累犯の放火による妻と幼子の殺害という結果はあまりにも痛ましすぎます。

とにかく現在の形とは違うなんらかの方法で解決しなければならない問題がはっきりそこに存在していることを、アルベルトさんの運動がひとつ提示しています。

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