図書館が捜査機関にあなたの購読記録を通報する日

Agents' visit chills UMass Dartmouth senior (by AARON NICODEMUS, Standard-Times staff writer
「A senior at UMass Dartmouth was visited by federal agents two months ago, after he requested a copy of Mao Tse-Tung's tome on Communism called "The Little Red Book."
Two history professors at UMass Dartmouth, Brian Glyn Williams and Robert Pontbriand, said the student told them he requested the book through the UMass Dartmouth library's interlibrary loan program.
The student, who was completing a research paper on Communism for Professor Pontbriand's class on fascism and totalitarianism, filled out a form for the request, leaving his name, address, phone number and Social Security number. He was later visited at his parents' home in New Bedford by two agents of the Department of Homeland Security, the professors said. 」

(私訳)

マサチューセッツ大学ダートマス校の4年生が、毛沢東の”リトルレッドブック”を大学図書館でリクエストしたところ、政府のエージェントが家までやってきた。教授の語るところ、「マサチューセッツ大学ダートマス校の図書館で学生がそこになかった本を借りるため他館のものをリクエストしたんだ。学生はそのために名前や住所、電話番号やソーシャルセキュリティナンバーを残したところ、家まで国土安全保障省(DHS)のエージェントがやってきんだよ。」

図書館の自由に関する宣言の第三をご覧下さい。

第3 図書館は利用者の秘密を守る

「読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。

図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。

利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。」 

一個人がどのような思想状況をその内部で構成しているのかを知る手だては現在でも各種存在します。

たとえば書籍をクレジットカードで購入しており、その履歴を見ることが許される人にはそのクレジットカードホルダーの趣味、思考を大まかに知ることができます。

知の集大成、図書館であっても、利用するための登録カードを追跡することで、登録者の趣味思考、現在の興味の矛先などをそれを閲覧することが自由な人には実務的に可能です。

現に性犯罪事件がひとたび起これば、地域のレンタルビデオショップはあらゆる顧客の利用履歴を警察に無防備に提出しているのが現実です。

ところで各人の思想状況が丸裸の世の中に住むことを少し想像してみてください。

あなたの親、友達、仕事の相手先まですべてあなたの思想履歴を知られるのだとしたら、あなたもあなたの友達も、口からでる言葉は”どの年代に読まれても誰からも文句が出ない”大新聞の紙面と同じような正論ばかりになるはずです。

そしてそうした思想にバランス感覚のない時代がどういう場所に国を連れて行ってしまうのかは、戦前の日本を顧みれば明らかになります。

まさに”図書館の自由に関する宣言”とは、そうした図書館が一思想へ国民全体を先導した時代を恥じた上で、1954年に日本図書館協会が採択したものです。

今ではもっとも”温厚な役所”と呼びたくなる図書館でさえ、敗戦するまでは人々を思想的に先導することにやぶさかでなかった歴史があるのです。

第二次世界大戦の大火が日本の家屋を粗方焼き尽くしたあと、立ち上がったさまざまな飾り気のない反省のうちの一つが、この”図書館の自由”でした。

それは当然、憲法19条が保障する「思想・良心の自由」を側面から援護するものであり、誰がどのような図書を借りたのかは図書館が歴史的反省の上からも死守しなければならない重要な秘密のひとつとして宣言が指定しています。

昨今、アメリカの大統領の盗聴問題が取りざたされていますが、図書館の利用履歴をも政府に筒抜けだったとする今回の事件はより深刻な事態を実は国民に告げています。

鍵をかけないで自動車を離れて少年がそれを盗めば、鍵をかけ忘れたあなたが「少年犯罪を不用意に増やした」と責められるのがアメリカですが、この日本でもクレジットカードではなるべく本を買わないなどの実務レベルの個人的対策が所作として必要な時代の到来を告げるニュースかもしれません。



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