リボルビング払いという泥沼と投げられた命綱

リボ払い、書面なしは無効 消費者金融に返還義務 (サンケイ)
「一定限度額の範囲内なら、返済しながら何度でも借り入れができる消費者金融のリボルビング(定額返済)方式をめぐり、債務者が業者に利息制限法の上限を超えた過払い金の返還を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は15日「返済期間や返済額を記載した書面を毎回交付しなければ、貸し付けは無効」との初判断を示した。」

貸金業法の43条1項2号をご覧下さい。

貸金業の規制等に関する法律

第43条(任意に支払つた場合のみなし弁済)

貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第1条第1項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。

2.第18条第1項の規定により第18条第1項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払」

1980年代のサラ金問題をきっかけに、1983年、出資法の改正と貸金業法の制定が行われました。

出資法の改正は刑事罰の課せられる規制金利を低くしましたが、他方貸金業法はグレーゾーンにある金利も一定要件下では有効なものとみなすことにしました。

これが貸金業法43条 1項、みなし弁済と呼ばれるものです。

本来、利息制限法の制限利率を超える利息の約定は無効で、従来の判例理論によれば債務者が超過利息を支払っても,元本が残存すればそれに充当され、また元本が完済された場合には不当利得として返還を請求することができるはずでした。

このため、貸金業法43条1項により、みなし弁済を成立させ、余分な支払を貸金業者のフトコロに納めたままにしておくには種々の厳格な要件が要求されており、18条1項が要求する受取証書の交付もそのひとつです。

しかし同じ18条の2項は、弁済が預金口座への払込みでなされた場合、支払の事実自体は払込領収書で証明できるため、請求がなければ受取証書を交付しなくともよいとしています。

問題はそこでいう”受取証書の免除”が、みなし弁済という貸金業者にとって強力に有利な制度をも受取証書なしで成立させることを意味するのか、です。

実は学説上の多数説は、たとえ預金口座への払込みであってもみなし弁済に必要な受取証書を省略などさせないと考えています。

つまり通説は払込みは払込みとして、それとはべつに受取証書で両者の間の法律関係に区切りをつけていくこと、すなわち消費者金融の利用者に自己の負債状態をことあるごとに認識することを要求しているのです。

最高裁平成11年1月21日第一小法廷判決も、『貸金業の規制等に関する法律43条1項によって有効な利息の債務の弁済とみなされるためには,

・・・特段の事情のない限り,貸金業者は,右の払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,同法18条1項に規定する書面を債務者に交付しなければならないと解するのが相当である。

・・・同法43条1項2号は,受取証書の交付について何らの除外事由を設けておらず,また,債務者は,受取証書の交付を受けることによって,払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を初めて具体的に把握することができるからである。』としています。

(以上出典:民法判例百選2 債権 有斐閣

貸金業者にとっては笑いの止まらない打ち出の小槌、リボルビング払い最高裁からとうとう一定の楔が打ち込まれました。

しかし裁判所がどれほど歯止めをかけようとしても、債務者がどれくらいの借金をしているのかを直視しなくて済むシステムは、利用者の心理と貸金業者のそろばん、双方のニーズによりまた違ったカタチで用意されるかもしれません。


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