お嫁さん付き家屋の販売とUSP

家を買うとお嫁さんがついてきます(exiteニュース)
「さて最近、アメリカのオンラインオークションでは1位を誇るe-bayで「お嫁さん付きの家」が登場し、メディアで大きく取り上げられている。48歳には見えない美貌の持ち主、デボラさんが、40~60歳までの男性に$600,000でデンバーのトレンドな地域にある家をお嫁さん付き(彼女自身)で売り出したのだ。」

不当景品類及び不当表示防止法4条2号をご覧下さい。

第4条(不当な表示の禁止)

事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。

2.商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」 

話をまとめますと「約7000万円払って、私と結婚しませんか?家はもうあります。」というディールになります。

通常はそのような申し出に対してすぐに肯首できる肝の据わった男性を探すのは比較的難しいものと思われますが、「7000万円で家を売ります。しかもお嫁さんをつけます」といいかえることにより、見込み客(結婚相手の男性)の集まり方は相当数違ってくると思われます。

どのような人がビッドウィナーでも即、結婚相手の資格を取得できるかどうか、オークションの詳細は定かではありませんが、一定数の男性を集めた後、候補者のなかから出品者のデボラさんが選ぶのであるとすれば(もちろん私が出品者ならそうしますが)、それはたいへん捻りのきいた集客方法であり、さらには優秀なUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)でもあります。

USP、つまり独自の売り込み提案としては、FEDEXの「翌日配達」、ROREXの「勝者の時計」などが有名です。

それは一言で人の心に吸着し、エレベーターの中でその話を聞いたあなたがエレベーターから下りるときにはもうサービスの概要を頭に入れることができるほどの「強みの伝播」でなければなりません。

「7000万円払うと、家と、しかもなんとお嫁さんまでついてくる」というオークションタイトルは、通常の結婚申込にくらべて非常に伝播力をもったUSPとして機能しているといえます。

(事実そのオークションは国際ニュースとして取り上げられ、ここ日本まで伝わっています。)

不当景品類及び不当表示防止法は、事業者がそれらで顧客の誘引を防止し、公正な競争を確保することで、一般消費者の利益を保護するための法律です。

その4条は他の事業者よりも著しく優良か有利であるように一般消費者を誤認させるような誇大広告・欺瞞的表示を禁止しています。

いかに優れたUSPといえどもやりすぎ、あるいは虚偽の内容であれば、私達の公平な消費活動を保障するため、事業者は不当景品類及び不当表示防止法6条以下によりこれを排除されるのです。

家と自分を売りに出したデボラさんと入札者は、事業者と消費者の関係にあるとはいえませんので、もし話が日本であっても不当景品類及び不当表示防止法が彼女のオークションに首を突っ込んでくる心配はありません。

むしろ日本でなら彼女がまず戦わなければならないのは、”女性から景品をもって出会いを誘引する”という、ある意味誠実な行動に対する社会の圧力であるものと思われます。
 


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