大音量兵器をつんだ客船がとても豪華だった理由

「大音響兵器」で海賊撃退、ソマリア沖で米豪華客船(CNN)
「エジプト・アレクサンドリアからケニア・モンバサに向かっていた米豪華客船(乗客151人、乗員161人)が5日、アフリカ東部ソマリア沖約160キロの海上で、2台のボートに乗った武装海賊に襲われた。客船は非殺傷兵器の長距離音響装置(LRAD)で海賊を撃退した。」

領海条約、14条の4をご覧下さい。

領海及び接続水域に関する条約

「4 通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約の規定及び国際法の他の規則に従つて行なわなければならない。 」 

ストックホルム国際平和研究所の「SIPRI Yearbook 2005」によれば、昨年の世界の総軍事費の推定額は$1035 billion、本日のレート1ドル118円で計算して約122兆円です。
http://www.sipri.org/contents/publications/pocket/pocket_yb.html

この122兆円という死の巨大事業をめぐって、アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリアなど世界のメーカーは次々と新兵器を開発しますし、その有効性を検証するため、そしてなにより新しい軍事兵器の需要を作り出すためには、どんどんどんどん新しい戦場が必要です。

122兆円という数字は、次から次へと人の肉が吹き飛ばす死のビジネスモデルが国富をもたらしてきたからこそできあたがったものでしたし、これからもその成長をギラギラと期待されています。

なにも日本もその蚊帳の外にいるわけではなく、SIPRIの2001年の資料で世界第十四位には三菱重工が25億ドルの契約高を誇る軍需産業として顔を出しています。

今回、アメリカの豪華客船が使ったLRAD(Long Range Acoustic Device)も、もとはといえば兵器メーカーが米海軍にプレゼンテーションして採用された新型の兵器なのだそうです。

この装置によって、アメリカの富を享受する人達をたくさん乗せた豪華客船は、無政府状態のソマリアから放たれた海賊達からの攻撃を無事かわせたようです。

通常、船舶には無害通航権が航海条約により認められています。

無害通航権とは、一四条四によれば「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」航行の安全が害されない権利のことです。

ソマリア沿岸を航行するあらゆる船の安全も、この無害通航権によって保障されなければならず、沿岸国はこれを無作為、作為をもって遵守しなければなりません。

ただしたしかどこかの国の画策のせいで、ソマリアには国家がない事実上の無政府状態が続いています。

そのためこの沿岸を通行する船舶は、沿岸国家の作為を期待することなく、自衛策を要求されることになっています。

兵器メーカーは現在、とてもバラエティにあふれた兵器の数々が開発を進めています。

人体を傷つけることなく、電子機器だけをオシャカにするEMP(電磁波爆弾)、ボーイング社による無人戦闘機などもすでに実用段階にあるといいます。

やろうと思えば永遠に工事しつづけることのできる公共事業軍事産業によってもたらされる富は、主に地球の北半球に豪華客船をもっともっと増やしていくのでしょう。

反対に南半球には、何故か海賊船が増えていくかもしれません。
 


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