ゴルファーはメーカーに印象という莫大な資産を投射する

「藍は成長」ソレンスタム絶賛(Livedoorスポーツ)
「思えば昨年の11月2日。宮里はソレンスタムと、横峯さくら東尾理子を交えた9ホールのスキンズマッチで初対決した。「メンタルが凄いんですよ。テレビで見ているよりもっとどっしりしているというか…」。間近で見てきた“世界の女王”のゴルフをうまく表現できず、宮里はそのもどかしい思いを「とにかく凄いんです」という言葉で強引に締めくくった。」

民法の91条をご覧下さい。

第91条〔任意規定と異なる意思表示〕

「法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関せざる規定に異なりたる意思を表示したるときは其意思に従ふ」 

芸能人、有名人にとって、そのブランドイメージが封入された肖像には、一般人とちがった意味合いが併存しています。

おニャン子クラブ事件と呼ばれる判例でも、東京高裁は「芸能人の氏名・肖像が有する「顧客吸引力のもつ経済的利益ないし価値」は保護に値する」と認めています(平成3年9月26日)。

有名人の肖像には”そっとしておいてくれ”というたぐいのプライバシーには収まらない経済的利益があり、これを無断使用すれば侵害行為があると認定できる別の角度の要保護利益が存在するということです。

実際に宮里藍さんと専属契約を結んだブリヂストンスポーツは、新たな購買層の取り込みに大成功したのだといいます。

では、わたしたちはなぜそれほどまでに、颯爽とした一流選手の使う道具やウエアを好むのでしょうか。

モーターショウのピカピカに磨き上げられた車の近くに美女が立つのは、いうまでもなく彼女の美しさ、好ましさをユーザが車の中に同視する効果を望んでいるからであり、しかもその手法が長年続いているのは驚くべき効果が裏付けられているからです。

これをアリゾナ州立大学教授のロバート・B・チャルディーニは「連合の原理」と呼びました。

商品と名声を結びつけることにメーカーが大金を投じるのは、消費者が探しているのは味気ないスペック比較などではなく、いかに好ましいイメージとその商品が結びついているのかだからです。

民法の大原則の一つに契約自由の原則というものがありますが、これは契約の内容や形式をどうするか、契約を結ぶか結ばないかは当事者の自由であるという原則のことです。

直接の根拠条文は存在しませんが、中でも91条の中には意思自由の原則のあらわれを見ることが可能です。

それは個人の人格の自由を尊んで生まれたルールだといえますが、法学的形式性を離れて、心理学的に精査すれば、24時間のうち自分がどれほどの時間、自分自身で判断を下しているのかは実は非常にあやふやな部分でもあります。

そんなとき91条を裏返しにして、「私は私の選択をしたのだ」と誰でもない自分自身から言われてしまえば、民法上の契約の成立は納得せざるをえませんし、そうだからこそ富の偏在は起こっているのかもしれません。

もしあなたがコンシューマー・コントロールから自由になりたいのなら、「自分が宮里藍さんが好きなことと、自分の腕にどのクラブがあっているのかは別の話である」ことに自覚的になる必要があります。

ただし、それが幸福なことかどうかは別としてです。

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