エジプトのピラミッド近くに円借款で博物館開設へ(日経新聞)
「【カイロ=金沢浩明】エジプト政府は2009年をメドに、カイロ郊外の大ピラミッド近くに新たに「エジプト大博物館」を開設すると発表した。建設費用は円借款で賄う計画。ツタンカーメンの黄金のマスクなど世界的に有名な遺産の保存・展示に、日本とエジプトが協力する形となる」
刑法の254条をご覧下さい。
第254条〔遺失物等横領〕 「遺失物,漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は,1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。」 |
エジプトの古王国時代、国が乱れ始めるとせっかくのファラオ(王)の来世の家、ピラミッドも盗掘の被害にあいはじめ、財宝は片っ端からピラミッドから運び出されはじめました。
他民族に攻めいられたあと約150年後、ふたたび彼らをエジプトから追い出し新王国時代を迎えたエジプト人は、今度は墓をなるべく目立たないようさびしい谷に横穴を掘って墓をつくりはじめました。
これを「王家の谷」と言うそうです。
しかしその谷もやがて盗掘の被害にあうことになりますが、奇跡的に無事に残っていたのが新王国時代のツタンカーメン王の墓でした。
考古学者がそこを見つけたとき、墓の中には金銀財宝のなかの三重の棺に守られて、黄金のマスクをつけたミイラが眠っていたといいます。
ツタンカーメンは18才の若さで死んだエジプト新王国時代のファラオでした。
ファラオとしての人生は非常に短かったものの、棺の中でオシリス(死者の神)と変わった後、もっとも奇跡を見せたのがツタンカーメンという王だったわけです。
日本の刑法では、第254条が遺失物や漂流物など、占有を離れた他人の物を領得した場合にも、処罰することを定めています。
それは財産権の保障を占有のない物にまで及ばすことで、我が国における資本主義の機密度を高めようとする条文です(私見)。
もし日本の古墳から宝石が盗まれた場合、そこには相続人が想定できませんので、民法959条で国庫に帰属することになります。
しかし占有という状態は古墳には想定することができませんので、結局刑法254条の文言である「占有を離れた他人の物」ということになり、遺失物横領罪の客体になることになります。
「古墳のものだから誰の物でもないだろう」というわけにはいかないのです。
3500年の間、王家の谷で盗賊の目をくらまし続けるという奇跡を演じ続けた若きオシリスの財宝は、日本の円借款を利用して現代の私たちと対面することになります。
ひょっとするとツタンカーメンという王のあまりにも早い死は、古代エジプトが異民族に完全に支配されるまでの黄金時代を、現代人に誇り高く語るためのさだめだったかもしれません。
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