津高:ウォーターボーイズ、初公演(毎日新聞 - 三重)
「生徒は1年9組の13人。担任の藤田隆司教諭(36)は、男子生徒がシンクロに挑戦する姿を描いた映画「ウォーターボーイズ」(01年公開)を見て以来、「プールのある学校に着任したら、男子生徒にシンクロをやらせたい」と思い続けていた。」
国際水泳連盟(FINA)のシンクロナイズドスイミング競技規則、第14条をご覧下さい。
FINA SYNCHRONISED SWIMMING RULES 2005 - 2009 「SS 14.1 Time limits for Technical Routines and Free Routines including ten (10) seconds for deck movement:」 (私訳) 「14条の1 以下に各種目の規定時間を定める。尚陸上動作はいずれも10秒以内とする。」 |
条文にいうテクニカルルーティンとは、音楽にあわせて決められたテクニックを含んだ演目のことだそうで、フリールーティンは自由に表現する演目だそうです。
どちらも時間が定められていますが、シンクロナイズドスイミングの世界共通ルールであるFINA規約によれば、陸上動作はいずれも10秒以内と定められています。
そうしますと、実は男子シンクロでおなじみのプールサイド観客直前で披露するダンスなどは時間オーバーで減点対象になってしまいます。
そしてそれよりなにより、男子シンクロは現在、日本水泳連盟のシンクロナイズドスイミング委員会がみとめる”正式な競技”ではありません。
委員会で男子の競技化がはじめて正式な議題になったのが、やっとこの4月のことです。
委員会は男子シンクロが一過性のブームであること、逆に言えば競技として公式認可したあとで、競技人口や観客が減っていくことを憂慮しています。
ただ観客動員数がそれほど高くないと思われる競技などもオリンピックの正式種目となっていることを考えれば、ある程度の数の選手層と、彼らによる恒常的熱意の表現こそ競技化を進めさせるといえるでしょう。
(収益可能性ばかりで決定されていくとすれば、それは徐々にスポーツ振興とは呼べなくなります。)
現在のところ「男子シンクロを正式競技化する」とだけ言われれば、私たちの見たいユーモアを含んだ男子高校生の全力投球は FINAシンクロ競技規則 14条などにはばまれて消えてしまうかもしれません。
映画やTVの「ウォーターボーイズ」で見たような、また昨今の学校で夏に行われるようなユーモアもある男子シンクロも並行して残した方がよいと観客側が要望するなら、そういう声を届ける必要もあるでしょう。
そして日本水連はそうした声を採取して、FINAとは関わりなくそうしたローカルルールを設ける自立性を有していてかまわないと思います。
(FINA競技規則も1条で国際コンペティションの時だけは共通ルールに従うように言っています。)
活動を下から積み上げていくやり方は、大きな組織を統治する一つの有効な手法です。