ブログで暴言を吐いた店員と国家のアニメ政策

「オタ」「きもい」──スタッフのブログ発言、企業を巻き込む騒動に(itmedia)
「発端は8月12~14日に東京で開かれた「コミックマーケット」(コミケ)。会場に出店した同社フランチャイズ企業のアルバイトスタッフが、実名で運営していたブログに「みんな頑張ってバイトしています!まぁお客はみんなオタ」「大量オタ。これがぶぁぁぁぁあっているの。恐い!きもい!」などと写真付きで記事を掲載した。」

コンテンツ促進法の第2条をご覧下さい。

コンテンツの創造・保護及び活用の促進に関する法律

第二条(定義)

「この法律において「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラムであって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう。」

おそらく女性店員さんは、思ったままをブログに書いてしまったのでしょう。

しかし思ったままを口にして許されるのは小学生までという常識は、彼女を使って収益を得る会社によって、まず周知されていなければなりません。

かつてロンドンのキングスロード駅から歩いて30分かかる果てに「SEX」という小さなブティックができ、そこを経営していたカップルが出入りしていた客の若者をプロモートしてロック界のスーパースターに変えました。

やがて「SEX」は「WorldsEnd」となり、床の傾いたその小さなお店は後のイギリスの一大ファッション産業を支えるブランドの発祥地になりました。

そうした当時のイギリス文化や空気を知らない多くの女性達も、ビビアン・ウエストウッドやマルコム・マクラーレンや、後のディオールを任されることになったジョン・ガリアーノを生んだ文化的空気は興味を持たないままステータスを上げてくれると信じて高価なバッグを先を競って買い求めます。

たとえファッションの文化としての決定的重要要素といえる音楽を知らなかったとしても、産業としてのファッションは十分流通しますし、それぞれの現場にはそれぞれ独自な成立の仕方があります。

それでも尚、もし特定の現場を”きもい””ちゃらい”と言い切ってもよい人が実在するとすれば、彼や彼女には、非現実的な程の量の知識とセンスが要求されるはずです。

この世の中は一朝一夕には理解できない構造で動いています。

たとえばその狂気は一般に理解されていなくても、村上隆のアニメをモチーフにした作品群がブランド物のバッグや六本木ヒルズに張り付いていることにも、文化として戦略的二重構造があることを見る人と見ない人があります。

こと自分のよく知らない文化に対して批判したくなった時には、いろいろふまえて口を閉じておく忍耐が肝要です。

無難な文化ばかりをチョイスしてきた目からは見えなかったかもしれませんが、女性が見下したアニメファンという現場でさえ、経済産業省がコンテンツ促進法を平成16年に新設し、対世界戦略の大きな稼ぎ手として最重要視しているという、国家プロジェクトとしての二重構造を備えているのですから。
 

 
法理メール?