ギリシャに落ちた旅客機と炭化した二人

「Two charred bodies were still hugging each other.」(washingtonpost

(私訳)

「炭化した二つの死体が、まだお互いを抱擁していた」

シカゴ条約の第26条をご覧下さい。

Article 26

Investigation of accidents

「In the event of an accident to an aircraft of a contracting State occurring in the territory of another contracting State, and involving death or serious injury, or indicating serious technical defect in the aircraft or air navigation facilities, the State in which the accident occurs will institute an inquiry into the circumstances of the accident, in accordance, so far as its laws permit, with the procedure which may be recommended by the International Civil Aviation Organization.」

(私訳)

第26条 事故の調査

「・・・とにかく重大と思われる事故が起こった時には、航空機事故の発生国が調査を開始し、その国の法律が許す限り、国際民間航空機関の方式に則って調査すること。(以下略)」

国際民間航空条約、通称シカゴ条約、とは、国際民間航空の主として公法関係について定めた多数国間の条約です。

領空飛行に関する約束や、航空機の取扱い、手続統一への協力などを規定した、国際航空に関する最も重要な条約だといわれます。

その26条は、重大事故に対して国際民間航空機関方式に則った調査義務を課しています。

その条文の立法趣旨は、重大な事故を国内事情でうやむやにすることなく、悲しい事故を世界の空の交通の共通財産として昇華させんと条約を締結した世界各国に対して間違いのない明白な手続きを要求するものです(私見)。

ワシントンポストによれば、空調設備の不良でコックピットに有毒ガスを送り込んでしまった可能性があるといいます。

そのせいで操縦士は皆操縦席に伏せ、乗客が操縦桿を握っていたところを戦闘機のパイロットが目撃したのだとか。

航空産業はこうした悲劇を繰り返しながら、負の遺産をも燃料により高く安全な飛行手順を手にしてきました。

太陽神ヘリオスの名を掲げた航空会社のジャンボジェットは、マラソンの山に砕けました。

抱き合ったまま炭化してしまった二人の想いをうやむやにされないよう、現地の事故調査に対してシカゴ条約第26条がその公正さを要求しています。
 

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