サスケ議員の公費流用疑惑と幌馬車のゆくえ

グレート・サスケ議員が公費流用? (スポーツニッポン)
「覆面プロレスラーのザ・グレート・サスケ岩手県議が昨年10月、岩手県二戸市から自らが取締役を務める「みちのくプロレス」の試合が行われた秋田市までのJR新幹線代計9600円(運賃とグリーン席特急券)を、県議会の政務調査費から支出していたことが、13日分かった。」

地方自治法の100条13号をご覧下さい。

第100条〔調査権〕

「13 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。」  

あなたは今大きな幌馬車に何家族かいっしょになって乗っています。

この幌馬車は、他の幌馬車とともに、ネイティブ・アメリカンの攻撃を受けない、新たな開拓地を目指して荒野を走っているところです。

もう少し走れば次の宿場町に着くのですが、あなたの小さな妹が「どうしてもトイレにいきたい」と泣きやんでくれません。

さあ、あなたは幌馬車の馭者(ドライバー)に、果たして車を止めてくれと言い出すことができるでしょうか?

端的に言えば、この幌馬車隊のなかの一台の幌馬車こそ、「地方自治」というものの思考モデルになるものです(極私見)。

戦争に負けるまで私たちが使っていた旧憲法では、幌馬車の馭者は幌馬車隊の隊長(天皇)の意向を素早く実行する係でしかありませんでした。

これを地方自治の対義語で、「官治行政」とよびます。

幌馬車の馭者(知事)はすべて、隊長の関係者(国の官吏)で、幌馬車内の決めごとはすべて馭者に監督されていました。

戦争に負けたあと、使うことになった現在の憲法では、幌馬車隊は隊長による上命下服でなく、各幌馬車の自治権を認めています。

あなたの小さな妹がトイレに行きたくなれば、現在の私たちの国では隊列を大きく乱さない限り、馭者に「車を止めてくれ」と言い出すことが許されているのです。

このことを憲法学において、「地方自治の本旨」と呼びます。

そして各幌馬車にはその地方自治の本旨に基づいて、妹の気持ちを最優先させるという「住民自治」と、その実効性を確保するため、各幌馬車の動きは乗客が決めるという「団体自治」が認められています。

幌馬車隊が地獄に向かうも極楽に向かうも、隊長の一存次第であるとせず、乗っている一人一人の心を出発点にすることを「国民主権」、と呼び、その意見を総意させて行き先を決めることを「民主主義」と呼びますが、両者の実現は幌馬車隊単位で行うよりも、一つ一つの幌馬車の自治判断にまかせたほうが、あなたの小さな妹を助けられるのはおわかりでしょう。

一方、幌馬車隊という幌馬車の一群で移動するからこそ、ネイティブ・アメリカンからの襲撃にも耐えうる側面もあり、地方自治という幌馬車一台一台に自治権を与える制度は隊全体と相俟って乗客の命を助けることになります。

さて、各幌馬車には乗客達の気持ちをまとめる代表者が何人か乗っていますが、その集団を地方議会と呼びます。

地方議会には、「地方自治の本旨」に基づき各種の権力が認められており、サスケ議員の用いた政務調査費地方自治法100条13号で正式に認められています。

また、今回どういう意図があってかサスケ議員の流用のみが突然クローズアップされていますが、この調査費流用は古くから問題視されています。

ここ東京都においてもそれは例外ではなく、各地方自治体で使途不明な領収書の山が毎年築かれています。

あなたの小さな妹を守るため幌馬車に与えられた「地方自治の本旨」は、幌馬車に乗る代表者たちに年間数百万円、政務調査費という現金に姿を変えて与えられれ、それがなぜか議員の自宅の電気代やガス代、水道代や自宅の電話代、NHKの受信料、新年会や忘年会の会費に消えているといわれているのです。

しかし修正が必要とはいえ、各幌馬車に十分な権力が与えられているシステム自体は、あなたの小さな妹の為にも死守しなければなりません。

そしてあなたのその家族を思う心は、同時に、幌馬車隊全体で戦火滾る森へ迷い込んでいくことに強力なブレーキもかけるのです。
 

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