利用者からの通報を無視するヤフーと株主の目

ヤフー:利用者からの通報無視、不正出品オークション
「女性は「犯罪を未然に防いだのに、なぜ取り消し料まで請求されるのか。手数料で収益を上げている企業としての責任を果たしていない」と憤っている。」

商法の204条をご覧下さい。

第204条〔株式の譲渡性〕

「株式は之を他人に譲渡すことを得(以下略)」
 

YAHOOJAPANの2005年3月期 第4四半期および通期の財務・業績の概況中の当四半期および通期の損益計算書によれば、売上高76億5千6百万円のうち、パーソナルサービス(「Yahoo!オークション」のシステム利用料等)が断トツの売り上げで63億5千8百万円、以下、ビジネスサービスが9億1千3百万円、次に広告が3億8千4百万円となっています。

すなわち、ヤフージャパンとは今やオークションが主力事業の会社、オークション屋さんであるとさえいうことができます。

すると事業体としてのヤフージャパンが最大のエネルギーを投下すべきは、最も売り上げの上がるオークションというマーケットのシステムを健全に維持する部門になるはずで、株主もそれを期待するはずです。

もし、記事の通りの対応がヤフージャパンの基本姿勢であるとすれば、それは必ずしもヤフージャパンに資本投下している多くの投資家の期待する結果を将来的にもたらさないかもしれません。

株主の法律上の地位(社員権)は、団体法上の権利であって、通常の債権とは性質が異なり、株主の諸権利は独立して個別に処分することができません。

株式は、株主が株主の資格において有する一切の権利を包含するものだからです。

では株主は、事の成り行きを常に指をくわえておらなければならず、自身の所有した株券の値下がり、値上がりは常に取締役および取締役会次第ということになるのでしょうか。

株主総会というものがありますが、株主は本来一切の事項を決定する権限を持っている実質的所有者であるにもかかわらず、混乱をふせぐために株主総会の権限は商法や各定款に定められた事項内に封じ込まれています(230条の10)。

代表訴訟など非常態的手段も用意されていますが、そのコストを考えれば、株主の投資という経済活動に純化した視点からは、決して有効な手段だとはいえません。

結局もっとも実効性の高い意思表明の手段は204条で保障される株式の譲渡だということになります。

ゴチャゴチャ言うより先行きが暗いと判断したなら、売ってしまったほうが早いということです。

商法204条は、資本回収実効性を担保する投資家にとって最も有効な盾であり、同時に会社の活動に向けた矛であるといえるのです(私見)。

多数の投資家が、一本のニュースを読み、特定の企業の態度から株価の先行きに不安を覚えて放出を始めれば、結果株価という社会からの観測的評価は下落を開始しはじめます。

このため株式会社が本質的にもっとも恐れるべき条文は、204条であるとも換言できます(私見)。

ヤフージャパンに莫大な収益をもたらし続けるオークションID登録者(毎月294円の会員費)の数は相当数いるものと考えられ、いちいち彼らの不規則事態に対して非定型対応をとることは確かに収益をコストで圧迫してしまうかもしれません。

しかし株価とは、未来を織り込んだ会社への資産的評価である以上、会社の対応を見つめる一人一人の株主の目を、ゆめゆめ軽んじるべきではないものと思われます。
 

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