「藍ちゃん」も登場 ひらつか七夕まつり開幕 神奈川(朝日新聞)
労働基準法の第5条をご覧下さい。
第5条(強制労働の禁止) 「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」 |
天帝の美しい娘、織り姫さんの仕事は機織り、精悍な若者、ひこぼしさんの仕事は牛引きでした。
ある日ふたりは出会い、恋に落ち、結婚しました。
しかしその後、織り姫さんがあまりの幸せのため機織りの仕事を怠り、彼女のお父さんは婿入りしたひこぼしさんを追い出し、二人を離ればなれにしてしまいました。
その後、あまりにも織り姫さんが嘆き悲しむので、お父さんは年に一度、7月7日の夜だけ逢うことを許しました。
そして二人を引き裂いた天の川に、もし雨が降って増水しても二人が会えるよう、天の川に橋が架けられ織り姫さんが年に一度だけその橋を渡るというのが七夕というお話です。
ところでその空の下、日本では明治時代、農村での貧困に耐えかねたたくさんの、女性というにはあまりに年若い子供達が女工として出稼ぎに出、一日十五時間の労働に耐えていました。
しかしそのような環境が人間の体に良い影響を与えるはずが無く、当然ストレスと労働の重圧で体を壊し、結果、少女達が廃人同然になってしまうと、無理矢理家族にひきとらせたといいます。
こういった悲劇の再現を避けるため、憲法27条2項は,「賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める」と規定しています。
その立法趣旨は、もし雇う人と雇われる人が自由に労働条件の決定している状態を放置すれば、自然、生産手段を持たない雇われる側の人が雇う側の人に言い値で契約されることになり、低賃金や過重労働に黙って耐えるしかなくなるため、間に国が入り、雇われる人の保護のために労働基準を定めようとしたものです。
労働基準法5条はまさに、かつて野麦峠を超えて製糸工場に出稼ぎにでた女工の人たちが逃走できないよう鉄の窓枠の宿舎に入れられていたような状況を想定し、雇う側がそうであるように、雇われる側も幸福を追求するために生まれてきた人間であることを法の力で再言しています。
織り姫のお父さんが頭に来たのは、労働をさぼったそれ自体よりも、娘を牛飼いに取られた嫉妬心だったからかもしれません。
しかしたとえ父であろうとも、彼女自身が選択した幸福の形を取り上げてしまうなら、いったい彼女がなぜ生まれてきたのかがそもそも不明になってしまいます。
当然ですが、人の法律、労働基準法5条は夜空には届きませんので、今年も織り姫とひこぼしのかつての選択は、夜が明けるまでの間しか、形作ることを許されません。
法理メール?